1.令和8年司法試験論文式刑事系第1問。設問2は、公共の危険と、その認識の要否を書けばよいことが明らかです。ただ、当てはめをしようとして、気になることがある。それは、漁業関係者の存在です。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 8 燃えているA車の近くには、A車から西側へ約3メートルの位置にC所有の無人の自動車(以下「C車」という。)が駐車されていたほか、A車から東側へ約2メートルの位置にはゴミ集積場が設けられており、その当時、同ゴミ集積場には可燃性のゴミ約300キログラムが、高さ約1メートル、幅約4メートル、奥行約2メートルにわたって置かれていた。 〔設問2〕 【事例2】における甲及び乙の罪責について論じなさい(刑法第104条の罪、同法第190条の罪及び特別法違反の点は除く。)。 (引用終わり) |
公共の危険については、ほとんどの受験生が、駐車場事件決定の規範を用意していたはずです。
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(『刑法各論【第2版】(司法試験定義趣旨論証集)』より引用。太字強調は筆者。) ・☆「公共の危険」(109条2項、110条1項、116条2項)の意義 (参照条文)刑法 ※ 最決平15・4・14。 (引用終わり) |
「不特定『又は』多数人」であって、「不特定『かつ』多数人」ではないことが重要です。ここは、「かつ」か、「又は」かで学説が分かれている(大塚仁ほか『大コンメンタール刑法第3版第7巻』(青林書院 2014年)10頁[村瀬均])ので、判例がどちらの立場なのかを明確にすることに特別の意味がある。なので、ここは「不特定・多数人」のように省略して記載してはいけないのですね。「かつ」や「又は」であることが自明であったり、学説がその点を特に意識しておらず、どちらであるかを敢えてボカしておいた方が汎用的な当てはめができて便利だったりするときは、「・」にしてよいのですが、それが許されない場合もあるのです。論証集を作成する際に、「・」に省略してはいけないところまで「・」にしてしまっていないか、「かつ」や「又は」を明記する必要のない場所まで、「かつ」や「又は」を明記してしまっていないか、こうしたところも、ちゃんとした論証集か、そうでない論証集かを見分けるチェックポイントの1つになります。
2.それはともかく、上記判例の規範を素直に本問に当てはめるなら、C車の存在だけで簡単に公共の危険が肯定できてしまいそうです。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 8 燃えているA車の近くには、A車から西側へ約3メートルの位置にC所有の無人の自動車(以下「C車」という。)が駐車されていたほか、A車から東側へ約2メートルの位置にはゴミ集積場が設けられており、その当時、同ゴミ集積場には可燃性のゴミ約300キログラムが、高さ約1メートル、幅約4メートル、奥行約2メートルにわたって置かれていた。 (中略) 本件火災により、A車は全焼し、さらに、C車と前記ゴミ集積場に延焼の危険が及んだが、周囲の建造物に延焼する危険は生じなかった。 (引用終わり) |
問題文上、C車に延焼の危険が及んだと明記されているので、「約3メートル離れているから延焼の危険はなかった。」のような認定はできません。そうすると、不特定人であるCの財産であるC車に対する危険があるのだから、それだけで公共の危険があるといえそう。後は、C車への延焼のおそれについて甲は認識していたけど、乙は認識していなかったから、乙について公共の危険の認識の要否が問題になる。これだけでよいとみえます。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) なお、甲が前記放火行為に及んだ当時、甲は、場合によっては本件火災による火がC車や前記ゴミ集積場にあるゴミに燃え移るかもしれないと思っていたが、乙は、その火がそれらに燃え移るとは思っていなかった。 (引用終わり) |
ちなみに、ゴミ集積所については、ゴミは無主物なので(※1)、ゴミ集積所のゴミへの延焼の危険は、それだけでは「不特定又は多数人の財産に対する危険」とはいえない、というダミーとしての意味を持つと理解できる。なので、まあ分からんでもないわけですね。
※1 厳密には、ゴミの所有権の帰属は簡単ではないのですが、考査委員は無主物前提で作問しているとみえます(理論的には、所有権は残存していても放火罪の成立を基礎付けるほどの要保護性はない、という説明はあり得るでしょう。)。ここら辺りの雑さ加減は、A車の所有権についても同様ですね(「窃盗は書くけどコンパクトに(令和8年司法試験論文式刑事系第1問)」)。
3.考査委員は、意味もなく、うっかり漁業関係者を登場させてしまったのか。そうではありません。実は、駐車場事件決定には、複数の読み方があり得るのです。まず、「不特定」とは、どのような意味か。これは、犯行とは関係なく偶然存在する物をいうと考えるのが一般的です(大塚仁ほか『大コンメンタール刑法第3版第7巻』(青林書院 2014年)10頁[村瀬均])。本問のC車は、たまたまその日に駐車されて現場にあった車ですから、「不特定」といえる。もっとも、このような「不特定」の理解でよいか、という点については、「なお検討を要する。」(松原芳博『刑法各論[第3版]』(日本評論社 2024年)440頁注50)ともされているところです。「漁業関係者のように誰が来るか行為時に分からないものは不特定だけど、C車は行為時に「C車」として特定されているのだから不特定じゃないでしょ。」という理解も成り立たないとはいえないわけですね。
もう1つ。財産に対する危険は、それだけで公共の危険を基礎付け得るか。本問で、仮にC車しか存在せず、C車への延焼以外に公共の危険を基礎付け得るものがなかったとしましょう。その場合、仮に、甲乙がA車だけでなく、C車も一緒に燃やしてやろうと思ったとします。そうすると、A車及びC車が放火の客体になる(※2)。この場合、放火の客体以外には公共の危険を基礎付け得るものがないので、公共の危険は存在しないことになり、建造物等以外放火罪は成立し得ない、ということになるでしょう。A車だけを燃やすつもりなら、「C車に燃え移りそうだから」という理由で建造物等以外放火罪が成立するのに、A車とC車を一緒に燃やすつもりなら、「A車とC車の他に燃え移りそうにないから」という理由で建造物等以外放火罪は成立しない。これは明らかにおかしいでしょう。前に説明した「C車は不特定財産なのか?」という問いも、これと関連しています。
※2 そのことを理解して問題文を読むと、実は甲はC車に対する未必の故意がある、という認定も可能になっており、この問題が顕在化し得る事例として出題されていることが分かります。
このような発想から、学説では、財産だけでは公共の危険を基礎付けることはできず、その財産の延焼を通じて不特定又は多数の人の生命・身体に危険が及ぶ場合でなければ公共の危険は認められないとか、本問のように行為時に存在する財産は「不特定」とはいえないので、多数ないし大規模の財産に延焼するおそれがないと「公共の危険」は認められない、などと考えられてきたのでした(大塚仁ほか『大コンメンタール刑法第3版第7巻』(青林書院 2014年)11頁[村瀬均])、松原芳博『刑法各論[第3版]』(日本評論社 2024年)440頁)。
「判例ってそんなこと言ってたっけ?判例はその場にたまたま駐車してた車に燃え移りそうってだけで公共の危険を認めてなかった?」と思ったなら、改めて判例を見てみましょう。
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(駐車場事件決定より引用。太字強調は筆者。) 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件に関する事実関係は,以下のとおりである。 (1) 被告人は,妻と共謀の上,長女が通学する小学校の担任教諭の所有に係る自動車(以下「被害車両」という。)に放火しようと企て,本件当日午後9時50分ころ,同小学校教職員用の駐車場に無人でとめられていた被害車両に対し,ガソリン約1.45lを車体のほぼ全体にかけた上,これにガスライターで点火して放火した。 (2) 本件駐車場は,市街地にあって,公園及び他の駐車場に隣接し,道路を挟んで前記小学校や農業協同組合の建物に隣接する位置関係にあった。また,本件当時,前部を北向きにしてとめられていた被害車両の近くには,前記教諭以外の者の所有に係る2台の自動車が無人でとめられており,うち1台(以下「第1車両」という。)は被害車両の左側部から西側へ3.8mの位置に,他の1台(以下「第2車両」という。)は第1車両の左側部から更に西側へ0.9mの位置にあった。そして,被害車両の右側部から東側に3.4mの位置には周囲を金属製の網等で囲んだゴミ集積場が設けられており,本件当時,同所に一般家庭等から出された可燃性のゴミ約300kgが置かれていた。 (3) 被害車両には,当時,約55lのガソリンが入っていたが,前記放火により被害車両から高さ約20ないし30cmの火が上がっているところを,たまたま付近に来た者が発見し,その通報により消防車が出動し,消火活動により鎮火した。消防隊員が現場に到着したころには,被害車両左後方の火炎は,高さ約1m,幅約40ないし50cmに達していた。 (4) 本件火災により,被害車両は,左右前輪タイヤの上部,左右タイヤハウス及びエンジンルーム内の一部配線の絶縁被覆が焼損し,ワイパーブレード及びフロントガラスが焼けてひび割れを生じ,左リアコンビネーションランプ付近が焼損して焼け穴を作り,トランクの内部も一部焼損し,更に第1,第2車両と前記ゴミ集積場に延焼の危険が及んだ。 2 所論は,刑法110条1項にいう「公共の危険」は,同法108条,109条所定の建造物等への延焼のおそれに限られる旨主張する。しかし,同法110条1項にいう「公共の危険」は,必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく,不特定又は多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。そして,市街地の駐車場において,被害車両からの出火により,第1,第2車両に延焼の危険が及んだ等の本件事実関係の下では,同法110条1項にいう「公共の危険」の発生を肯定することができるというべきである。本件について同項の建造物等以外放火罪の成立を認めた原判決の判断は,正当である。 (引用終わり) |
犯行時に存在する財産単体への延焼の危険だけでは公共の危険を認めることはできないと考える学説は、上記判例について、「公園、他の駐車場、道路、小学校・農協の建物に隣接してたし、『市街地』って強調してるだろ。いつ不特定の人が通ってもおかしくないことに着目してる。だから、その場にあった車だけじゃダメって趣旨なんだよ。」と説明するのでした。このような学説の理解によれば、本問の駐車場は市街地ではなく港にあるので、上記判例とは事案が違うだろ、ということになるわけです。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 6 乙は、同月21日午前1時頃、前記港の人がいない駐車場に到着した……(略)……。 (引用終わり) |
ちなみに、本問では最寄りの建造物まで約25メートルの距離とされていますが、これは上記判例の事案と同じです(松宮孝明「判批」刑法判例百選Ⅱ各論〔第8版〕172、173頁)。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 8 ……(略)……。 (引用終わり) |
最高裁の判文上、この点は摘示されていません。約25メートルの距離があれば延焼の危険はなく、この事実は公共の危険を肯定するという結論を導く要素ではないので、敢えて摘示しなかったのでしょう。いずれにせよ、問題文で延焼の危険が生じなかったことが明記されているので、「25メートルでも風向きによっては延焼する危険があった。」のような認定はNGです。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 本件火災により、A車は全焼し、さらに、C車と前記ゴミ集積場に延焼の危険が及んだが、周囲の建造物に延焼する危険は生じなかった。 (引用終わり) |
こうして、上記のような学説の立場からは、C車だけでは公共の危険を基礎付けることができないのでした。
4.そこで、漁業関係者の出番です。漁業関係者が出入りしてくれれば、不特定人の生命・身体に危険が生じたという余地が出てきます。同時に、ゴミ集積所の意味合いも変わってくる。ここのゴミ集積所のゴミの量は、結構すごいです。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 8 ……(略)……A車から東側へ約2メートルの位置にはゴミ集積場が設けられており、その当時、同ゴミ集積場には可燃性のゴミ約300キログラムが、高さ約1メートル、幅約4メートル、奥行約2メートルにわたって置かれていた。 (引用終わり) |
300キログラムというのは、45L袋に入れると大体50~60袋くらい。全部燃えたらそれなりにヤバい感じの設定になっています。これを媒介にして、漁業関係者の生命・身体の危険を認定させたかったのでしょう(※3)。このように考えれば、本問では、乙だけでなく、甲も公共の危険の認識を欠いていたことになります。
※3 前記駐車場事件決定でも、ゴミ集積所に300キログラムの可燃性ゴミが置かれていた旨が摘示されていますが、それが結論にどのように影響したかについては触れられていません。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) 8 ……(略)……。 〔設問2〕 【事例2】における甲及び乙の罪責について論じなさい(刑法第104条の罪、同法第190条の罪及び特別法違反の点は除く。)。 (引用終わり) |
おそらく、考査委員は、公共の危険に係る規範・当てはめを通じて判例をどのように理解しているかを確認し、その理解と、甲・乙の認識の有無が論理的に一貫しているかを試そうとしていたのでしょう。C車単体で簡単に公共の危険を認めることの問題点を指摘した上で、漁業関係者の存在を指摘して公共の危険を認める筋で一貫した答案を書いたなら、それは高く評価されそうです。
ちなみに、この点は、平成25年司法試験論文式刑事系第1問でも問われていました。
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(平成25年司法試験論文式刑事系第1問問題文より引用。太字強調は筆者。) 3 その後,甲は,給油所でガソリン10リットルを購入し,B車の後部座席にそのガソリンを入れた容器を置いた上,B車を運転して乙宅に行った。甲は,乙に対し,「この車を廃車にしようと思うが,手続が面倒だから,お前と何度か行ったことがある採石場の駐車場に持って行ってガソリンをまいて燃やしてくれ。ガソリンはもう後部座席に積んである。」などと言い,トランク内にAを閉じ込めた状態であることを秘したまま,B車を燃やすよう指示した。乙は,組長である甲の指示であることから,これを引き受けた。甲が以前に乙と行ったことがある採石場(以下「本件採石場」という。)は,人里離れた山中にあり,夜間はひとけがなく,周囲に建物等もない場所であり,甲は,本件採石場の駐車場(以下「本件駐車場」という。)でB車を燃やしても,建物その他の物や人に火勢が及ぶおそれは全くないと認識していた。 (中略) 6 本件駐車場は,南北に走る道路の西側に面する南北約20メートル,東西約10メートルの長方形状の砂利の敷地であり,その周囲には岩ばかりの採石現場が広がっていた。本件採石場に建物はなく,当時夜間であったので,人もいなかった。乙は,上記南北に走る道路から本件駐車場に入ると,B車を本件駐車場の南西角にB車前方を西に向けて駐車した。本件駐車場には,以前甲と乙が数回訪れたときには駐車車両はなかったが,この日は,乙が駐車したB車の右側,すなわち北側約5メートルの地点に,荷台にベニヤ板が3枚積まれている無人の普通貨物自動車1台(C所有)がB車と並列に駐車されていた。また,その更に北側にも,順に約1メートルずつの間隔で,無人の普通乗用自動車1台(D所有)及び荷物が積まれていない無人の普通貨物自動車1台(E所有)がいずれも並列に駐車されていた。しかし,本件駐車場内にはその他の車両はなく,人もいなかった。当時の天候は,晴れで,北西に向かって毎秒約2メートルの風が吹いていた。また,B車の車内のシートは布製であり,後部座席には雑誌数冊と新聞紙が置いてあった。乙は,それら本件駐車場内外の状況,天候や車内の状況等を認識した上,「ここなら,誰にも気付かれずにB車を燃やすことができる。他の車に火が燃え移ることもないだろう。」と考え,その場でB車を燃やすこととした。乙は,トランク内のAがまだ生存していると思っており,トランクを開けて確認することなく,B車を燃やしてAを殺害することとした。乙は,B車後部座席に容器に入れて置いてあったガソリン10リットルをB車の車内及び外側のボディーに満遍なくまき,B車の東方約5メートルの地点まで離れた上,丸めた新聞紙にライターで火をつけてこれをB車の方に投げ付けた。すると,その火は,乙がまいたガソリンに引火し,B車全体が炎に包まれてAの死体もろとも炎上した。その炎は,地上から約5メートルの高さに達し,時折,隣のC所有の普通貨物自動車の左側面にも届いたが,間もなく風向きが変わり,南東に向かって風が吹くようになったため,C所有の普通貨物自動車は,左側面が一部すすけたものの,燃え上がるには至らず,その他の2台の駐車車両は何らの被害も受けなかった。 (引用終わり) |
上記学説の理解によれば、平成25年司法試験論文式刑事系第1問の事例は、CDE所有の3台を「多数人の財産」と評価しない限り、公共の危険を否定するべきものだったのでした。令和3年予備試験では、さらにめんどくさい感じで問われていたのでした(「令和3年予備試験論文式刑法参考答案」)。
5.とはいえ、ほとんどの受験生は、上記のような学説の理解なんて知らないでしょう。仮に知っていても、きれいにそれを言語化して答案に書くのは難しい。結果的に、C車だけでも公共の危険を基礎付け得るという前提で書いた答案がほとんどだっただろうと思います。その場合、漁業関係者は、いてもいなくてもよいような存在になる。それでも、漁業関係者への危険は答案で触れるべきでしょう。C車と並列するような位置付けで、ゴミ集積所への延焼→漁業関係者の生命・身体の危険という流れを明示して書く。現在の刑法における採点傾向からすれば、「理論的にはC車だけで十分なので、漁業関係者は書きませんでした。」というのは、低い評価になりやすいでしょう。理論的にも、量刑に影響し得るから全く無意味ではないということもある。そんなわけで、参考答案では、C車と並列的にゴミ集積所→漁業関係者という流れで書いています。本問は忙しいので評価に文字数を割くことが難しいでしょうから、ゴミについて、「大量に」の3文字だけ評価を付しています。この程度なら、時間に余裕がなくてもできたでしょう。「キログラム」、「メートル」を「kg」、「m」とするのも、文字数を節約するテクニックです。この筋で書く場合には、甲はC車への延焼の危険を認識しているので、乙だけが公共の危険の認識を欠いていることになります。
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(参考答案より引用。太字強調は筆者。) ⑶ 「公共の危険」(110条1項)とは、不特定又は多数人の生命、身体又は財産に対する危険をいう(駐車場事件)。 ⑷ 甲は漁業関係者が出入りする可能性を認識していなかったが、火がC車に燃え移るかもしれないと思っていたから、公共の危険の認識がある。他方、乙は、C車にもごみ集積所にも燃え移るとは思っていなかった。公共の危険の認識を欠いている。 ⑸ 以上から、甲乙に自己所有建造物等以外放火罪の共同正犯が成立する。 (引用終わり) |
設問2は論点の数が少ないので、学説と判例の対立が激しい公共の危険の認識の要否のところは、参考答案のように他説批判も書きたいところ。ここは、現場で思い付くことも不可能ではなかったと思いますが、論証として覚えておけば楽だったでしょう。
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(『刑法各論【第2版】(司法試験定義趣旨論証集)』より引用。太字強調は筆者。) ・公共の危険(110条1項)認識必要説批判 (引用終わり) |
6.従来、刑法は、「規範の明示と事実の摘示」がハマりやすい科目で、正確な規範を書いて大魔神の如く事実を書き写しまくっていれば上位。気の利いた評価を付していれば超上位、という感じでした。近時、理論面を問う設問もみられるようになりましたが、理論面の内容が難解過ぎて誰も書けないため、結局は「規範の明示と事実の摘示」で勝負が決まっていたのでした。ところが、今年の問題は、理論面の難易度がかなり下がっていて、書こうと思えば書ける受験生がかなりいたのではないかと思います。なので、今年に関しては、理論面で差が付く可能性が相当程度ありそう。今後も、このような傾向が続くのであれば、自説の理由付けや他説批判を論証として覚えておく必要性が高まってきそうです。同時に、当てはめにおいても、今回説明したような判例の理解の仕方が影響するような問題も増えてきそうです。とはいえ、ここはまだ難易度が高いので、そんなに差が付かないかな、という印象です。