入所措置要件の敗者復活戦
(令和8年司法試験論文式公法系第2問)

1.令和8年司法試験論文式公法系第2問。全体的に、問題文の量は多いものの、解答のポイントに気付いてしまえば、答案に書くべき量は少ない、という作りになっています。解答のポイントに気付かなかった場合には、敗者復活戦に回る。今回は、設問3の入所措置要件に関する敗者復活戦の戦い方を説明します。

2.前回の記事(「困難性と補充性の関係性を見抜く(令和8年司法試験論文式公法系第2問)」)で解説したようなポイントが全然分からんぞ、という人は、部分点を取りに行く方針に切り替える。まずは、会議録の誘導で前提とされているところについて、「その意味は分かってますよ。」ということを書く。ここでは、老人福祉法11条1項2号の要件のうち、困難性と補充性だけが問題になる理由がこれに当たります。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

職 員G:そういう事情もあって、令和8年7月6日の時点(【時点③】)で、Bは、本件入所措置を前提とした負担金額決定に基づいて支払った負担金相当額の財産的損害の賠償を求める本件訴訟を提起したのでしょうね。Bは、そもそも本件入所措置の時点(【時点②】)において、措置の要件が満たされていなかったと考えているようです。措置の要件としては、「居宅においてこれを受けることが困難なもの」という要件(困難性要件)のほか、「やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるとき」という要件(補充性要件)が問題になるのではないかと思います。

 (中略)

弁護士H:本件入所措置の時点(【時点②】)において、困難性要件及び補充性要件が満たされていたとしても、その後の事情の変化により、これらの要件の一つが満たされなくなったときには、本件入所措置を解除すべきかが問題になります。老人福祉法第12条は、措置の解除について規定していますけれども、これは解除の手続を定めたものにすぎません。入所措置と措置解除のそれぞれの要件を特定し、本件入所措置時点の事実関係と現在までの事実の変化を整理した上で、その法的評価を検討する必要がありますね。

(引用終わり)

 末尾の関係法令を見ると、困難性と補充性のほかに、「65歳以上の者」、「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」という要件があることに気が付くでしょう。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

【資料1 関係法令】
○ 老人福祉法(昭和38年法律第133号)(抜粋)

 (中略)

(老人ホームへの入所等)
第11条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。
 一 (略)
 二 65歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する特別養護老人ホームに入所を委託すること。
 三 (略)
2 (略)

(引用終わり)

 「65歳以上の者」については、問題文の事例冒頭で75歳と書いてあるから、これを満たしていることが明らかです。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

Aは、令和8年1月6日の時点で75歳であり、同日まで子のBとC市内で同居していた。

(引用終わり)

 「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」については、問題文冒頭の事例と会議録の最初の方に書いてある。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

Aは、令和8年1月6日の時点で75歳であり、同日まで子のBとC市内で同居していた。当時Aは、判断能力には問題がないものの、両腕の機能に障害があり、要介護状態区分につき要介護3の認定を受け、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。

 (中略)

弁護士H:そうですね。高齢者虐待防止法第9条第2項は、高齢者を一時的に保護するために、老人福祉法第11条等の、いわゆる福祉の措置を講じるように求めています。老人福祉法第11条等の福祉の措置が、行政上の不服申立てや取消訴訟の対象であることに、実務上の争いはありません。具体的には、措置解除の規定の存在に着目して、措置決定には施設でサービスを受ける地位を設定する法的効果があると考えることが一般的だと思います。また、Aには身体障害があり、要介護認定のうち最も軽度の要介護1から最も重度の要介護5までの中で要介護3の状態なので、老人福祉法第11条第1項第2号の「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」という要件を満たしていると考えられます。

(引用終わり)

 なので、残るは困難性と補充性だけ。だから、会議録では、困難性と補充性だけが問題になるとされていたのでした。「俺はこれが分かってるぜ!」と問題文を書き写して答案に書く。

【論述例】

1.時点②の本件入所措置要件

⑴ Aは、75歳であり、「65歳以上の者」に当たる。判断能力には問題がないが、両腕機能障害があり、要介護3認定を受けたから、「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」の要件を満たす。残る困難性要件及び補充性要件が問題になる。

 こんなの大した点にならなそうですし、なんなら余事記載になるだけかもしれないけれど、ここは全く頭を使わずに問題文を書き写すだけで書ける。ポイントが分からない場合には、このようなところで小銭を稼ぎにいくしかありません。

3.困難性と補充性の関係については、前回の記事で説明したとおりです(「困難性と補充性の関係性を見抜く(令和8年司法試験論文式公法系第2問)」)。でも、ざっくり読むと、「結局は虐待該当性だけ検討しろってことでしょ?」と読める。それに、バラバラに検討するよりは、虐待に当たるか、という一本にまとめた方が書きやすい。なので、会議録の記載を書き写しつつ、ここからは虐待該当性だけを検討する旨を書く。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

弁護士H:前者の困難性要件については、少なくとも居宅において高齢者虐待がある場合には、この要件が満たされるといえます。後者の補充性要件については、実務においては、自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難である場合等を指すと考えられています。高齢者虐待の事例では、こちらの要件も同時に満たされると判断される場合もあるでしょう。ただし、高齢者虐待の事実やそのおそれがなかったとすると、この要件が満たされない可能性もあります。

(引用終わり)

【論述例】

 虐待があれば、「居宅においてこれを受けることが困難」といえ、困難性を満たす。同時に、自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難であるともいえるから、補充性も満たす。そこで、虐待該当性を検討する。

 虐待があればどうして困難性と補充性を同時に満たすのか、現場でそれが読み解けないのであれば、会議録を書き写して結論だけ言い放つしかない。それでも、会議録の上記部分を全く無視してバラバラに検討した答案よりは評価されやすいでしょう。最低限、それだけは書くべきです。

4.後は、ひらすら大魔神案件として解く。大魔神案件のコツは、肯定方向か、否定方向か。その判断以外には、頭を使わない、ということです。「頭は使うな。手を使え。」が格言となります。具体的には、問題文を上から見ていって、B側か、C市側か。それだけを振り分けて答案に書き写す。紙媒体だったときは、ひとまず構成用紙にメモしておいて、完成してから答案用紙に書き込むという手順でしたが、CBTになって、上から問題文を読みながら、該当箇所を振り分けて解答スペースに直接書き写すという方法論が可能になりました。
 まず、先ほども見た最初の段落です。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

 Aは、令和8年1月6日の時点で75歳であり、同日まで子のBとC市内で同居していた。当時Aは、判断能力には問題がないものの、両腕の機能に障害があり、要介護状態区分につき要介護3の認定を受け、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。

(引用終わり)

 「Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。」の部分は、Bはちゃんとやってきた、という意味で、B側に有利でしょう。なので、B側の欄に書き写す。ひたすら事実を書き写して、最後は、「以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。」と言い放てばいいでしょう。なので、結論部分も先に書いておく。この時点では、こんな感じになるわけですね。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

 次の段落の最初の文章を見ましょう。

(問題文より引用)

 令和7年11月20日、Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。

(引用終わり)

 これは、C市側に有利ですよね。だから、C市側の反論の欄に書き写す。結論部分も、先に書いておきましょう。

【論述例】

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次の文章を見ます。

(問題文より引用)

 D病院において、Aに低ナトリウム血症(血液中のナトリウム濃度(血中ナトリウム値)が低下し、重症の場合には意識障害が生じ得る状態)が認められたため、AはそのままD病院に入院した。

(引用終わり)

 これも、C市側に有利。だから、C市側の反論の欄に書き写す。この際、低ナトリウム血症の説明部分はいらないので、括弧書は書き写さない。

【論述例】

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次の文章を見ます。

(問題文より引用)

 入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。

(引用終わり)

 これは、「大したことなかった。」という意味で、Bに有利。Bの主張の欄に書き写します。B主張の欄では入院の事情がいきなり出てくるので、「入院後」だけでは何の入院か分からない。なので、「D病院入院後」にする。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

 はい次。

(問題文より引用)

 同年12月10日、D病院の担当医は、A及びBに対して、Aには尿に塩分が出やすい症状があるものの、普通の食事を摂取していれば問題はなく、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。

(引用終わり)

 これは、C市側に有利。C市の反論に書き足していく。ただし、「Aには尿に塩分が出やすい症状があるものの、普通の食事を摂取していれば問題はなく」の部分は「自宅での食事が原因」であることの理由になっているだけなので、あまり重要ではなさそう。なので、ここは省略して書き写す。

【論述例】

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次。

(問題文より引用)

 その際、Bは、Aの健康のために塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。

(引用終わり)

 ここは、少し工夫が必要です。「Aの健康のために」はBに悪気はないという意味でB側に有利、「塩分控え目のものを十分食べさせている」は、Bが積極的に低塩分の食事を与えていることや、Bが説明を理解してないという意味でC市側に有利。なので、それぞれに分けて書き写す。それから、B側の方は、ちょっと順序を入れ替えて、「Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。」にする。こうした方が、B側に有利であることが分かりやすいからです。ここは、ちょっとだけ頭を使います。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次。

(問題文より引用)

 これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。

(引用終わり)

 これは、改めてちゃんと説明したのに、という意味だから、C市側に有利。C市の反論欄に書き写す。

【論述例】

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次いくぞ。

(問題文より引用)

 同月12日、AはD病院を退院して自宅に戻り、同月15日以降、介護保険法に基づく居宅サービスが再開された。

(引用終わり)

 退院できたから大したことなかった、ともいえそうですが、そこまで重要ではなさそう。なので、これは書き写さない。次を見る。

(問題文より引用)

 令和7年12月25日、Aを担当する介護支援専門員(ケアマネージャー)がAの自宅を訪問し、Aの様子を確認した。その際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していたため、介護支援専門員は、C市高齢者緊急一時保護事業実施要綱(以下「本件要綱」という。)に基づく緊急一時保護事業の利用をAに勧めた。

(引用終わり)

 「Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた」は、C市側に有利なのが明らか。一時保護申請のくだりはどちらに有利という感じでもないし、設問1の事情なので、これは書き写さなくてよさそう。

【論述例】

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。介護支援専門員がAの様子を確認した際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 次じゃ。

(問題文より引用)

 同日、Aは、介護支援専門員の手助けを得て、本件要綱に基づいて一時保護を申請したものの、C市福祉事務所長からは、同申請に対する応答がなかった【時点①】。

(引用終わり)

 ここは、ケアマネの手助けを得られるよね、という意味でB側に有利。設問1の事情なので関係なさそうな感じもするけど、これ以上頭を使いたくないので、とりあえず書き写します。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。Aは、介護支援専門員の手助けを得て一時保護を申請した。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

 次だ、まだ終わらんぞ。

(問題文より引用)

 令和8年1月5日、Aは、往診を担当する医師(以下「往診医」という。)による血液検査を受けた。翌日、往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではないものの、正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがあることを指摘した。

(引用終わり)

 ここは、両者に有利な事情が混在している。具体的には、「Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではない」は、B側に有利。「Aの血中ナトリウム値は正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがある」はC市側に有利。なので、分けて書き写す。「往診を担当する医師(以下「往診医」という。)」は、単に「往診医」でいい。

【論述例】

⑵ Bの主張

  Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。Aは、介護支援専門員の手助けを得て一時保護を申請した。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではないことを指摘した。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。介護支援専門員がAの様子を確認した際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがあることを指摘した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 さっさと次行くぞ。

(問題文より引用)

 そこで、令和8年1月6日、BはAをD病院に連れて行き、AはそのままD病院に入院した。

(引用終わり)

 ここは、Bが病院に連れて行ったことはBに有利だけど、入院になっちゃった、というのはC市に有利。だから、分けて書き写す。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。Aは、介護支援専門員の手助けを得て一時保護を申請した。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではないことを指摘した。BはAをD病院に連れて行った。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。介護支援専門員がAの様子を確認した際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがあることを指摘した。AはD病院に入院した。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 これ以降の事例部分は、これまでの事実関係を基礎にした行政庁側の判断等が記載されているだけなので、事実関係ではありません。書き写す必要はないでしょう。

(問題文より引用)

 令和8年1月7日、C市に対して、Aが養護者から十分な食事を与えられない虐待(ネグレクト)を受けていると思われる旨、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(以下「高齢者虐待防止法」という。)第7条第1項の規定による通報がされた。同日、C市福祉事務所の高齢者福祉担当職員は、往診医から前記令和8年1月5日に実施したAの血液検査の結果の報告を受けた。同担当職員は、Aの自宅での療養が継続した場合には、血中ナトリウム値が低下して意識障害が生じ、Aの生命に重大な危険が発生するおそれがある旨の報告書をC市福祉事務所長に提出した。
 令和8年1月8日、C市福祉事務所長は、Aに生命の危険が迫っているとの認識の下で、Aが居宅において常時の介護を受けることが困難であり、自ら介護老人福祉施設等と契約することも困難であると判断して、老人福祉法第11条第1項第2号に基づき、AをD病院から、C市の設置する特別養護老人ホームE園に入所させる措置(以下「本件入所措置」という。)をした。同日、Bは、本件入所措置が採られたことを知った【時点②】。

(引用終わり)

 後は、会議録と末尾の関係法令に上から順番に目を通していく。書き写すべきところはないか。そうすると、高齢者虐待防止法4条1項1号に気が付くでしょう。ここを落とした受験生は相当数いそうですが、上から順番に全部見る、という方法論で淡々と見ていけば、頭を使わなくても、ここは見逃さないところです。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

○ 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)
(抜粋)

 (中略)

(定義等)
第2条 この法律において「高齢者」とは、65歳以上の者をいう。
2 この法律において「養護者」とは、高齢者を現に養護する者であって養介護施設従事者等(中略)以外のものをいう。
3 この法律において「高齢者虐待」とは、養護者による高齢者虐待及び養介護施設従事者等による高齢者虐待をいう。
4 この法律において「養護者による高齢者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいう。
 一 養護者がその養護する高齢者について行う次に掲げる行為
  イ 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  ロ 高齢者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
  ハ 高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
  ニ (略)
 二 (略)
5、6 (略)

(引用終わり)

 こんなのは、条文に触れただけで加点だろう。B側はどれにも当たらない、C市側はロに当たると言うに決まってる。頭を使わなくてもそれだけは分かるから、それだけ書く。

【論述例】

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。Aは、介護支援専門員の手助けを得て一時保護を申請した。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではないことを指摘した。BはAをD病院に連れて行った。高齢者虐待防止法4条1項1号イロハのいずれにも当たらない。

 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。介護支援専門員がAの様子を確認した際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがあることを指摘した。AはD病院に入院した。高齢者虐待防止法4条1項1号ロの「高齢者を衰弱させるような著しい減食」に当たる。

 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

5.これで完成です。改めて、完成した論述例全体を見てみましょう。

【論述例】

1.時点②の本件入所措置要件

⑴ Aは、75歳であり、「65歳以上の者」に当たる。判断能力には問題がないが、両腕機能障害があり、要介護3認定を受けたから、「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」の要件を満たす。残る困難性要件及び補充性要件が問題になる。
 虐待があれば、「居宅においてこれを受けることが困難」といえ、困難性を満たす。同時に、自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難であるともいえるから、補充性も満たす。そこで、虐待該当性を検討する。

⑵ Bの主張

 Aは、Bの手助けの下で介護サービス契約を締結し、介護保険法に基づく居宅サービスを利用していた。Bは、約10年間にわたってAを介護していた。D病院入院後、Aの血中ナトリウム値は、点滴によって正常値に戻った。Bが塩分控え目のものを食べさせていたのは、Aの健康のためであった。Aは、介護支援専門員の手助けを得て一時保護を申請した。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は昨年11月の緊急搬送時よりは高くなっており、直ちに意識障害が生じる程度ではないことを指摘した。BはAをD病院に連れて行った。高齢者虐待防止法4条1項1号イロハのいずれにも当たらない。
 以上から、虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 Aは、意識障害の症状が出たため、D病院に緊急搬送された。D病院において、Aに低ナトリウム血症が認められたため、AはそのままD病院に入院した。D病院の担当医は、A及びBに対して、Aの低ナトリウム血症は自宅での食事が原因と思われる旨説明した。その際、Bは塩分控え目のものを十分食べさせていると発言した。これに対して、上記担当医は、塩分を控えすぎた食事では低ナトリウム血症が生じやすいこと、低栄養の予防が必要であることについて改めて説明した。介護支援専門員がAの様子を確認した際、Aは、入院前と変わらず塩分が少ない食事で、時々めまいがすると話していた。往診医は、Aの血液検査の結果をBに説明し、Aの血中ナトリウム値は正常値よりも低い値となっていること、この傾向が続けば意識障害が再発するおそれがあることを指摘した。AはD病院に入院した。高齢者虐待防止法4条1項1号ロの「高齢者を衰弱させるような著しい減食」に当たる。
 以上から、虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 やってることはバカ丸出しだけど、出来上がったものは意外と整然としている。そう感じられることでしょう。最低限、これくらいは、頭を使わなくても書ける。淡々と事実の仕分けをして、書き写していくだけです。頭を使わず腕っぷしだけで相手を捻じ伏せる。まさに大魔神です。具体的な方法論を聞くと、バカみたいに思うかもしれませんが、本試験の現場では、これだけでも時間内に書き切るのは難しい。手際よく問題文をスクロールさせて、答案部分にタイピング。行政法の知識・理解を踏まえた思考なんて一切やってなくても、かなり時間が掛かります。これを現場でやり切ったか。実際には、真面目に考えてしまったために時間切れで事実摘示すらできなかった答案、裁量論などの余事記載をしてしまった答案、問題文にない事実などを前提に延々と的外れな論述をする答案などが相当数出てくるので、このレベルでも合格水準に達してしまうでしょう。制限時間内にこれを上回る答案を余裕で書ける方法論があるならそれを用いるべきですが、現時点では、これを上回る方法論はなかなかないと思います。ちなみに、事実と事実の繋ぎの文章を一切入れないのもコツです。そんなの考えてたら、すぐ時間切れになってしまうでしょう。そんなのは、時間が余ってやることがなくなってから考えればいいことです。
 よく、「必ず評価を付してください!事実を書いただけでは無意味です!評価を付さない事実は書いてないのと同じですからね、全く点が付きませんよ!」などと言われることがあります。しかし、それが本当にそうなら、事実摘示しかしていない答案と、事実摘示すらしていない答案は、同じ評価になるはず。すなわち、上記の論述例と、下記の論述例は、全く同じ点数になるということを意味します。

【論述例】

1.時点②の本件入所措置要件

⑴ Aは「65歳以上の者」に当たる。「身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし」の要件を満たす。残る困難性要件及び補充性要件が問題になる。
 虐待があれば、「居宅においてこれを受けることが困難」といえ、困難性を満たす。同時に、自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難であるともいえるから、補充性も満たす。そこで、虐待該当性を検討する。

⑵ Bの主張

 虐待に当たらず、困難性も補充性も満たさない。

⑶ C市の反論

 虐待に当たり、困難性も補充性も満たす。

 そんわけあるか。仮に、全く評価がなくても、Bの主張に対応する事実、C市の反論に対応する事実が正しく記載されていれば、十分ではないにしても、一定の加点があることは明らかです。最低限、これを拾っていく。「事実に全部評価を付けよう。」なんて意識の高いことを考えているから、必要な事実をポロポロ落とすのです。上記の方法論なら、網羅的に事実を拾うので、必ずどこかに的確な事実摘示が含まれる。そこの配点を拾い集めていけば、相対評価で合格レベルになる。行政法の知識・理解は関係ない。これが、敗者復活戦ルートの戦い方です。ここまでやって、時間と答案スペースに余裕があったなら、後から評価文言を挿入していけばよいでしょう。CBTになって、その作業は容易になっています。

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