【答案のコンセプト等について】
1.現在の論文式試験においては、基本論点についての規範の明示と事実の摘示に極めて大きな配点があります。①基本論点について、②規範を明示し、③事実を摘示すること。これが、合格するための基本要件であり、合格答案の骨格をなす構成要素といえます。従来、当サイトでは、この①~③に特化した「参考答案(その1)」と、規範の理由付け、事実の評価、応用論点等の肉付けを行うとともに、より正確かつ緻密な論述をした「参考答案(その2)」を示してきました。両者を示すことにより、「規範と事実」で書く答案がどのようなものか、規範の理由付け、事実の評価、応用論点等を書くとすればどうなるか、というイメージが具体化されるとともに、理想を追い求めて、規範の理由付け、事実の評価、応用論点等を書きに行くと、現実には絶対に書けない答案になる、ということも、実感できたのではないかと思います。 当サイトとしては、上記のいわば両極ともいえる答案のイメージを具体化することについては、もう十分に達成できたと考えています。次の段階は、両者の中間に位置する現実的でリーズナブルな合格答案として、どのようなものをイメージすればよいのか。これを具体化することにある。そこで、上記①~③をベースとしつつ、無理なく書ける範囲の現実的でリーズナブルな合格答案を示すこととしました。このことは、今年からCBT方式による実施となることで、文字数の制限をより意識しなければならなくなることからも、意味のあることだろうと思っています。
2.行政法については、近時、上記①~③をベースにした7~8頁の答案が従来どおり上位になる一方、必ずしも上記①~③にとらわれない書き方で、解答のポイントをコンパクトに捉えた4頁程度の答案が上位になるという傾向がみられるようになっています。そこで、行政法の参考答案は、そのような4頁程度の上位答案のイメージを具体化したものとしています。
3. 参考答案中の太字強調部分は、『司法試験定義趣旨論証集行政法【第2版】』に準拠した部分です。なお、CBT方式の実施に伴い、判例の事件名の記載を簡略なものにしています(『刑法各論【第2版】(司法試験定義趣旨論証集)』「本書の概要」7項を参照)。
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【参考答案】 第1.設問1
1.本件要綱は行政規則にすぎず、「法令」(行手法2条1項1号参照)でないから、同要綱8条の「申請」は「法令に基づく申請」(行審法3条括弧書)でない。同要綱9条は保護決定通知の定めにすぎず、保護決定しない場合の通知の定めはないから、同要綱においてすら、市長が「諾『否』の応答」(行手法2条1項3号参照)をすべき仕組みにはなっていない。 2.以上から、Aがした一時保護の申請に対するC市福祉事務所長の不応答は、「行政庁の不作為」(行審法3条)に当たらない。 3.よって、Aがした審査請求は、不適法である。 第2.設問2 1.「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは、処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい、処分の相手方以外の者に上記利益があるかは、処分の根拠法規が不特定多数者の具体的利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むかで判断する(小田急高架訴訟)。 2.具体的利益かは、その利益が侵害されるときは処分をしてはならない趣旨か(行訴法9条2項)で判断する(処分要件説。主婦連ジュース事件も参照)。 ⑴ 児童福祉法27条1項3号の措置は親権者・未成年後見人の意に反して採ることができず、同法28条1項に該当するときでも家裁の承認を要するから、親権者・未成年後見人の利益が侵害されるときは処分をしてはならない趣旨を含む。
⑵ これに対し、老人福祉法(以下「法」)11条1項2号には、養護者の利益が侵害されるときは同号の措置(以下「2号措置」)をしてはならないとする要件はない。措置の実施により養護者は費用を徴収され得る(法28条)が、費用負担を理由として2号措置をしてはならないとする趣旨の定めはない。 3.そうすると、養護者は、2号措置により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者とはいえないから、「法律上の利益を有する者」に当たらず、原告適格は認められない。 4.よって、養護者であるBに本件入所措置の取消訴訟の原告適格は認められない。 第3.設問3 1.時点②の本件入所措置要件 ⑴ Bの主張 ア.Bが塩分控え目のものを食べさせたのは、Aの健康のためで、虐待の意思はない。したがって、虐待といえず、困難性を満たさない。 イ.仮に、困難性を満たすとしても、虐待事例で補充性が同時に満たされるのは、類型的に虐待者に施設入所契約締結の手助けをすることが期待できないからであるが、Bには虐待の意思がなく、Aのために介護サービス契約締結の手助けやD病院入院の手助けをしてきたから、上記のことは妥当しない。したがって、補充性を満たさない。 ⑵ Cの反論 ア.法11条1項2号の趣旨は老人保護にあるから、虐待の意思がなくても、老人に生命の危険が迫っているときは虐待と評価できる。 イ.Aに与える食事を改善しないBの態度から、居宅介護を断念して自発的に介護老人福祉施設等入所契約締結の手助けをすることは期待できないから、補充性を満たす。 2.時点③の本件入所措置解除要件 ⑴ 本件入所措置の解除は、同措置後の事情を理由に、将来に向かってその効力を失わせるものであるから、撤回である。その可否は、撤回による関係者の不利益を考慮しても、なお撤回すべき公益上の必要性が高いかで判断する(実子あっせん事件)。 ⑵ Bの主張 処分の原因事実が事後に解消したことは、撤回事由となる。 ⑶ Cの反論 処分後に生じた新たな原因事実は、撤回の障害事由となる。 以上 |