端末不具合等の発生割合・対応措置・予備論文の不具合予測等について
(令和8年司法試験)

1.短答式試験の結果と同時に、司法試験委員会から、「令和8年司法試験の実施状況について」という文書が公表されています。そこでは、受験者延べ人員42214人中、使用端末に不具合が生じるなどしたため試験時間の変更が行われ、それにより適正な試験時間が確保された事案が236件、端末不具合に起因して適正な試験時間が確保されなかった事案が11件あった旨が報告されています。これによると、使用端末不具合等が生じた事案は合計で247件あったことになるので、受験者延べ人員をベースにすると、短答・論文を合わせた全体の発生割合は約0.58%となります。この0.58%という割合は、宝くじでいえば、ナンバーズ3で異なる数字のボックスを購入した場合(1口200円)の当せん確率(0.6%)に近い数字(※1)で、その場合の当せん金額は15000円(理論値)とされています(「ナンバーズ3をもっと楽しむには?」宝くじ公式サイト)。
 ※1 0~9の10の数字をランダムに選択する試行を3回行うと、10×10×10=1000通りの組み合わせが生じます。そのうち、特定の3つの異なる数字の組み合わせは6通りある(「1」、「2」、「3」を例に取ると、123、132、213、231、312、321)ので、1000分の6、すなわち、0.6%となるわけです。なお、「当せん」の表記は、漢字表記にすると「当籤」です。「当選」ではありません。選挙ではなく、「籤(くじ)」だからですね。「籤(くじ)」の字が常用漢字ではないので、公用文ではひらがなで表記するのです。

2.上記は短答・論文を合わせた全体の割合ですが、短答と論文とを分けてみると、違いがあることに気付きます。短答は、受験者延べ人員11466人中13件なので、わずか0.11%程度。これは、ナンバーズ3でいえば、3桁の数字すべてを当てるストレートの当せん確率(0.1%)に近い数字で、その場合の当せん金額は9万円(理論値)とされています(「ナンバーズ3をもっと楽しむには?」宝くじ公式サイト)。他方、論文は、受験者延べ人員30748人中234件なので、0.76%と、全体でみた場合より0.1ポイントほど高くなる。これは、短答と論文ではシステムへの負荷が違うためなのでしょう。短答よりも論文の方が危ない、ということは、来年以降、受験する際の心の準備として、知っておいてよいかもしれません。

3.予備試験は、短答は紙媒体ですが、論文は今年からCBT方式で実施されます。仮に、司法試験の論文式試験と同様の割合で使用端末不具合等が生じるとすると、0.76%の割合で生じるということになる(※2)。試算をしてみましょう。今年の予備論文の受験者は2561人くらいと推計できます(「令和8年予備試験短答式試験の結果について(1)~合格点の決定基準と論文の難易度予測~」)。そうすると、2561人×0.0076≒19.4となって、概ね20人くらいが使用端末不具合等を経験することになりそうだ、ということが分かります。論文受験者全体で20人というと相当少ない、という感じですが、万が一ということはあり得るので、心の準備はしておきましょう。事前の心構えがあるかないかで、ストレスの度合いが違います。
 ※2 予備論文は、司法試験より受験者数が1300人ほど少なく、システムの負荷が下がることを考慮すると、発生割合はもう少し下がるかもしれません。

4.使用端末不具合等が生じた場合の対応について、247件中236件は、時間変更によって適正な試験時間が確保されたとされています。逆にいえば、適正な試験時間が確保されれば、仮に休憩時間が短縮されたりしたとしても、それ以上の対応は採らなかった、ということでしょう。最大で約3時間30分遅延したとあるので、きついなぁとは思うものの、逆にいえば、まあ、最悪でもそのくらいなんだ、と覚悟しておけばよいでしょう。
 適正な時間を確保できなかった事案は、初日の選択科目と公法系第1問だけであるとされています。おそらく、初日で対応が周知されていなかったことが原因でしょう。公法系第2問以降は、試験時間変更の措置を採るべきことが周知されて、時間を確保できないということはなかった。そういうことなのでしょう。そのように考えると、今年の予備の論文では、司法での経験を活かした対応マニュアルがきっちり周知されるはずなので、適正な時間を確保できない事案は生じなさそうだ、と予測できます。また、来年以降の司法試験でも、適正な時間を確保できないという事案はほとんど生じないと思っておいてよさそうです。

5.適正な時間を確保できなかった事案では、該当受験者の得点(素点)に、当該科目の満点に適正な試験時間に対する不足時間の割合を乗じた点数(小数点以下は切上げ)を加算することが決定されたとされています。例えば、公法系第1問で12分不足したとすると、公法系第1問の試験時間は2時間(120分)なので、適正な試験時間に対する不足時間の割合は10分の1。これを満点の100点に乗じると、10点。なので、受験者の素点に10点が加算される、ということになるのでしょう。論文の10点は、かなり大きい。筆者の感覚だと、これは過剰な加点ではないか、という感じがします。とはいえ、前記4のとおり、今後は、そのような事態はほとんど起きないと考えられるので、今後の受験対策という意味では、あまり気にすることはないでしょう。

6.ちなみに、上記文書には、試験科目ごとの受験者数が記載されています。これは、珍しいことです。これを見ると、初日に選択科目を受験したのに公法系第1問を受験しない人が12人、初日を受験したのに2日目を受験しない人が19人いることが分かります。これに対し、2日目を受験して3日目を受験しない人は9人、論文をすべて受験して短答を受験しない人は4人しかいませんし、短答の途中で離脱する人は1人もいません。選択科目や公法系で心を折られる人が多いことが実感できます。司法試験初日のポイントは、メンタルを保つことにあるのです。

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