1.令和8年司法試験論文式公法系第1問。②の「特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由」については、甲乙のやり取り中の、乙が「留意すべき」と言っている事項に対応する要素を問題文の事例から書き写しまくったかで、まずは合否が分かれる。そのことは、前回の記事(「公園で寝袋に入って一夜を明かす意味を明示する(令和8年司法試験論文式公法系第1問)」)で説明したとおりです。まずは、そこを当たり前のようにクリアすることを考えましょう。
2.ここからは、そこをクリアした先の話。問題文では、過去に夜間使用を許可された例として、星座鑑賞会や盆踊りという具体例がわざわざ挙がっていました。
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(問題文より引用。太字強調は筆者) 5年ほど前から、夜間に本件公園内で暴走族が集会を行ったり、未成年者が集まり飲酒をして騒ぐなどの行為が繰り返され、治安上の懸念を理由として夜間における公園の閉鎖を求める多くの陳情があったため、A市議会は本件条例を改正して、本件公園については夜間(午後7時から翌日午前7時まで)の利用を禁止した(本件条例第8条第1項)。条例改正を受けてA市は、本件公園を囲む鉄製の柵(高さ1.5メートル)を設置し、夜間、その出入口を施錠している。ただし、本件条例第8条第 2 項の許可を得れば、夜間でも本件公園の独占使用をすることは可能であり、市内の愛好者団体による星座鑑賞会や商店街主催の盆踊り等の行事が度々夜間に本件公園で開催されている。 (中略) 乙:本件公園は夜間、一般市民の利用が禁止されているとのことですが、本件条例第8条によれば、市長の許可があれば夜間の独占使用も可能とのことですし、過去にも許可した例があるようですね。 甲:はい。星座鑑賞会や盆踊りなど「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」(本件条例第8条第2項)があれば、許可をしてきました。例年10~20件は許可しております。ただし、住宅費高騰問題に関する抗議活動は、本件公園の夜間の独占使用によらずとも、昼間の公園でも行えますし、夜間ならば市立公民館でも行えるので、本件申請については、「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」を認めることはできません。 (引用終わり) |
予備校答練等では、たまたま元ネタにしていた裁判例の事案がそうなっていたので、それをただコピペしただけ。大して意味はない、ということがよくあります。しかし本試験では、こうした具体例にはきちんとした意味があるのです。
3.甲の発言を改めて見ると、「住宅費高騰問題に関する抗議活動は、本件公園の夜間の独占使用によらずとも、昼間の公園でも行えますし、夜間ならば市立公民館でも行える」と、「ダメな理由」は具体的に書いてあるのに、「星座鑑賞会や盆踊りがOKな理由」は具体的に書いてありません。
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(問題文より引用。太字強調は筆者) 甲:はい。星座鑑賞会や盆踊りなど「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」(本件条例第8条第2項)があれば、許可をしてきました。例年10~20件は許可しております。ただし、住宅費高騰問題に関する抗議活動は、本件公園の夜間の独占使用によらずとも、昼間の公園でも行えますし、夜間ならば市立公民館でも行えるので、本件申請については、「夜間の独占使用を認めるべき特別な理由」を認めることはできません。 (引用終わり) |
普通に考えれば、「昼間の公園でも行えますし、夜間ならば市立公民館でも行える」の逆、すなわち、昼間の公園ではダメだし、夜間の市立公民館でもダメな理由ということだろう。そう考えると、星座鑑賞会については、昼間に星が見えるわけないし、夜間に市立公民館の窓から星を見ろ、というのもおかしい、ということだろう。盆踊りについては、伝統的に夜間の屋外でやってきたんだから、昼間とか市立公民館でやったら興冷め。伝統行事としてあり得んってことなんだろう。ちょっと考えれば、そのようなことはすぐ分かるわけで、気付くこと自体は全然難しくない。そこに気付けば、本件活動についても、星座鑑賞会や盆踊りと同じだぞ、といえばよいのだろう。そのような目で直後の乙の発言を見れば、その意味がさらに明瞭になるでしょう。
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(問題文より引用。太字強調は筆者) 乙:Xとしては、特定の日時に世界規模で実施が計画されている本件プロジェクトに呼応するためには、本件公園で夜間に本件活動をするのが最適であると考えていることにも留意すべきでしょう。Xに対して特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由があるか否かの検討が必要になりますね。 (引用終わり) |
「本件公園で」、「夜間に」の意味合いを明瞭に把握した上で当てはめをしたかどうか。それによって、論述の的確さに差が付くでしょう。
4.後は、それをコンパクトに言語化して答案に明示する。参考答案は、その一例です。
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(参考答案より引用。太字強調は筆者) 星座鑑賞会は性質上星の見える夜間屋外でなければ目的を達し得ないし、伝統的に夜間屋外で実施されてきた盆踊りを昼間又は屋内で行ったのでは伝統行事としての目的を達し得ないのに対し、住宅費高騰問題に関する抗議活動は昼間の公園でも行えるし、夜間ならば市立公民館でも行えるから、特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由はないとの立場が考えられる。 (引用終わり) |
ここは、言われたら難しくないことですが、具体例の意味を答案に書くんだ、という意識がないと答案に書けない(書かない)ので、誰もが書いてくるところではありません。法科大学院はもちろん、最近は予備校でもこういうのを教えないので、できる人は結構少ない。なので、書けなくても合否には影響しないでしょう。合否は、それ以前の事実摘示(問題文の書写し)で決まる。それでも、ここは具体例の意味を言語化する意識と時間内に書き切るタイピング力さえあれば、憲法の知識がなくても書けるところです。できれば、頑張って書けるようになりたい。このようなことは、基本書、百選、論証集をグルグルしていても、身に付きません。何もしなくても当たり前のように書ける人はよいのですが、そうでない人は、演習を繰り返して訓練しましょう。