公園で寝袋に入って一夜を明かす意味を明示する
(令和8年司法試験論文式公法系第1問)

1.令和8年司法試験論文式公法系第1問。②の「特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由」については、甲乙のやり取り中の、乙が「留意すべき」と言っている事項に対応する要素を問題文の事例から書き写しまくったかで、まずは合否が分かれるでしょう。典型的な大魔神案件です。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

乙:Xとしては、特定の日時に世界規模で実施が計画されている本件プロジェクトに呼応するためには、本件公園で夜間に本件活動をするのが最適であると考えていることにも留意すべきでしょう。Xに対して特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由があるか否かの検討が必要になりますね。

(引用終わり)

 下記の参考答案の太字強調部分が、問題文からの書写し部分です。

(参考答案より引用。太字強調は筆者)

 星座鑑賞会は性質上星の見える夜間屋外でなければ目的を達し得ないし、伝統的に夜間屋外で実施されてきた盆踊りを昼間又は屋内で行ったのでは伝統行事としての目的を達し得ないのに対し、住宅費高騰問題に関する抗議活動は昼間の公園でも行えるし、夜間ならば市立公民館でも行えるから、特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由はないとの立場が考えられる。
 しかし、本件活動は、単に住宅費高騰問題に関する抗議活動として行うものでない。本件プロジェクトに参加するものである。本件プロジェクトでは、それぞれの現地時間で午後8時から翌午前6時までの夜間に都市中心部の公園等で人々が寝袋等で一夜を過ごす抗議活動を行うとされ、都市中心部において住宅を持てない貧困層が公園等で寝袋等で夜を過ごさざるを得なくなった状況を象徴的に表現することで抗議の意思を表明する目的がある。本件プロジェクトには世界各地の100以上の都市の市民が直ちに参加を表明し、世界各地の都市での抗議活動がリレーのように継続することから世界中で注目されており、日本でも度々報道されていた。21条1項の集会としての本件活動の意義も、その点にある。したがって、星座鑑賞会や盆踊りと同様、夜間でなければ活動の目的を達し得ない。
 都市中心部の公園等でなければ本件プロジェクトの上記趣旨に沿わないから、市立公民館では目的を達し得ない。A市内に同規模の市立公園はほかに5つあるが、いずれも郊外に位置している。市の中心部にあり、夜間も多くの人々が通行するのは本件公園のみであるから、他の市立公園では目的を達し得ない。
 以上から、特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由がある。

(引用終わり)

 上記太字強調部分を問題文から抽出して書き写すのが最低限で、それすらやってない人は、憲法の知識・理解にかかわらず、「問題文を書き写す能力がなかった。」という理由だけで評価を落とす。現在のCBTでは問題文はコピペできないので、自力でタイピングする必要があります。「問題文をわざわざタイピングするのめんどくせぇ。」などと言っている人は、とても「受かりにくい人」です。考査委員は、自分でもよく分からないうちに、タイピング力を法曹として必須の能力として受験生に求めているのです。

2.その上で、答案に明示したか否かで評価が分かれそうなのが、本件活動の持つ象徴的な意味です。

(問題文より引用。太字強調は筆者)

 ところで、近年、世界各地の大都市において住宅費高騰が深刻な社会問題になっており、その原因は都市中心部の再開発によって低廉物件の減少等をもたらした地方政府の失政にあるとして、都市中心部の公園や広場で人々が寝袋や段ボールで一夜を過ごす抗議活動が世界各地で行われるようになった。

 (中略)

 A市内で各種の市民運動に取り組んできた「市民自治を進める会」(以下「X」という。)は本件プロジェクトへの参加を決定し、その実施場所については、A市中心部にあって再開発地区と近接し、夜間でも周辺の通行人が多い本件公園が最も適当であると考えて、本件公園において寝袋や段ボールで一夜を過ごす抗議活動(以下「本件活動」という。)を行うことにした。そこで、同年5月10日、Xは、同年7月1日午後8時から同月2日午前6時までの本件公園の独占使用許可を求めて申請を行った(以下「本件申請」という。)。

(引用終わり)

 本件活動は本件プロジェクトに参加する趣旨のものなので、本件プロジェクトの意味を探っていくことになります。そこで、それを見ると、「世界各地の大都市において住宅費高騰が深刻な社会問題になっており、その原因は都市中心部の再開発によって低廉物件の減少等をもたらした地方政府の失政にあるとして、都市中心部の公園や広場で人々が寝袋や段ボールで一夜を過ごす抗議活動が世界各地で行われるようになった。」と書いてある。「世界各地の大都市において住宅費高騰が深刻な社会問題になっており、その原因は都市中心部の再開発によって低廉物件の減少等をもたらした地方政府の失政にある」ことに対して、どうして「都市中心部の公園や広場で人々が寝袋や段ボールで一夜を過ごす」ことが抗議活動になるのか。問題文には、敢えてその点が明示されていません。これを読み解いてくれ、というのが、出題の意図なのでしょう。このことを敢えて憲法論として位置付けるなら、本件活動の21条1項の集会としての意義を明らかにする作業ともいえます。集会該当性で頑張らないのは、ここで頑張るべきだからだったのでした(「集会該当性で頑張らない(令和8年司法試験論文式公法系第1問)」)。

3.「世界各地の大都市において住宅費高騰が深刻な社会問題になっており、その原因は都市中心部の再開発によって低廉物件の減少等をもたらした地方政府の失政にある」ことに対して抗議するなら、「世界各地の大都市において住宅費高騰が深刻な社会問題になっているぞ!その原因は、都市中心部の再開発によって低廉物件の減少等をもたらした地方政府の失政にあるぞ!直ちに都市中心部の再開発をやめろ!」などとシュプレヒコールをあげたりするのが一番分かりやすい。公園で寝てるだけじゃ、何のメッセージにもならないのではないか。そんなんただの野宿イベントじゃんね。ここまで言われたら、「いやそんなことないでしょ。住宅費が高騰して家を持てなくなったら、公園で寝袋に入って寝るしかなくなるってことを言いたいんでしょ。」などと言い返したくなるでしょう。こうしたやり取りがあれば、ほとんどの人がすぐに気付く。それほど難しいことではありません。問題は、これを現場で気付いて、試験時間内に答案上で言語化できるかです。これは、結構難しい。参考答案は、その一例です。この程度なら、書けないことはないでしょう。

(参考答案より引用。太字強調は筆者)

 本件活動は、単に住宅費高騰問題に関する抗議活動として行うものでない。本件プロジェクトに参加するものである。本件プロジェクトでは、それぞれの現地時間で午後8時から翌午前6時までの夜間に都市中心部の公園等で人々が寝袋等で一夜を過ごす抗議活動を行うとされ、都市中心部において住宅を持てない貧困層が公園等で寝袋等で夜を過ごさざるを得なくなった状況を象徴的に表現することで抗議の意思を表明する目的がある。本件プロジェクトには世界各地の100以上の都市の市民が直ちに参加を表明し、世界各地の都市での抗議活動がリレーのように継続することから世界中で注目されており、日本でも度々報道されていた。21条1項の集会としての本件活動の意義も、その点にある。したがって、星座鑑賞会や盆踊りと同様、夜間でなければ活動の目的を達し得ない。

(引用終わり)

 ちなみに、「公園等で寝袋等で」が気になって、「もっといい日本語に修正できないか。」と考えた人は、日本語の感覚としては正しいのですが、本試験の現場でそんなの気にするのは、ロスにしかならないことが多い、ということも、同時に理解しましょう。

4.ここは、それなりに難易度が高いところなので、合否を分けることはないでしょう。それでも、ここは現場で頑張りさえすれば、憲法の知識がなくても書けるところ。できれば、頑張って書けるようになりたい。そのためには、時間内に書き切るタイピング力も必要です。このようなことは、基本書、百選、論証集をグルグルしていても、身に付きません。何もしなくても当たり前のように思い付く人はよいのですが、そうでない人は、演習を繰り返して訓練しましょう。

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