1.令和8年司法試験論文式公法系第1問。本件活動が21条1項の集会といえるかについては、ちょっとだけ書きたくなる要素があります。
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(問題文より引用。太字強調は筆者) A市内で各種の市民運動に取り組んできた「市民自治を進める会」(以下「X」という。)は本件プロジェクトへの参加を決定し、その実施場所については、A市中心部にあって再開発地区と近接し、夜間でも周辺の通行人が多い本件公園が最も適当であると考えて、本件公園において寝袋や段ボールで一夜を過ごす抗議活動(以下「本件活動」という。)を行うことにした。 (引用終わり) |
「野宿してるだけじゃん。」という見方もできなくはない。そんなのが集会になるんだったら、サウナで大衆が雑魚寝してるのも集会ではないか。そこで、それとは違う要素を指摘する必要がありそうだ、ということですね。
2.そのことに気付いたなら、以下のように、気合を入れて書く、という方針も、あり得なくはありません。なお、太字強調部分は、『司法試験定義趣旨論証集(憲法)』に準拠している部分です。
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【論述例】 21条1項の集会とは、多数人が共通の目的を持って一定の場所に集まることをいう。その判断に当たっては、意見、情報等の伝達・交流の場であるとともに、対外的意見表明の有効な手段でもあるという集会の自由の保障根拠(成田新法事件)を考慮する。
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問題文の事情を書き写すだけでも相応の評価になるでしょうが、それに加えて、さりげなくコンパクトな評価文言を加えています。「だけで、単なる屋外宿泊行為」、「政治的意見を表明」、「象徴的行為によって」、「意見を表明するパネル等」、「抗議の意思を対外的に表明する目的」の部分が、それですね。なお、問題文で「寝袋や段ボール」とされているところを、さりげなく「寝袋等」に省略するのも、ちょっとしたテクニックです。ここでは、寝袋の他に段ボールがあることが重要な要素でないことを見越して、あっさりと「等」を用いて省略しているのです。これが、段ボールに意味のある問題であった場合には、簡単に省略してはいけません。その見極めも、瞬時にできることが必要です。
3.とはいえ、現実問題として、上記のように書いた方がいいかというと、ほとんどの人にとって、書くべきでない、といえます。本問は、他に書くべきこと、それも、集会該当性なんかより1文字当たりの得点効率が高そうなことがたくさんあるからです。それをまず、優先して書くべきでしょう。その上で、時間・紙幅が余ったなら、書きに行けばよい。加えて、本問では、②の「特別に夜間の独占使用を認めるべき憲法上の理由」のところで、本件プロジェクトに参加するという本件活動の意義を当てはめまくることになるから、わざわざ集会該当性で使う必要もない。そんなわけで、参考答案は、以下のように、超あっさり書いています。
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(参考答案より引用) 本件活動は、X会員20名程度が、本件プロジェクト参加という目的のため本件公園に集まってするから、同項の集会に当たる。 (引用終わり) |
論文式試験の答案は、理論的に必要だから、論点だから書くのではない。1文字当たりの得点効率のよいものから書いていく。優先順位の低いものは、書かない。この相場感、大局観は重要です。先天的に分かっている人はともかく、これがよく分からん、という人は、過去問を解き、再現答案と成績の対応を参考にするなどして、感覚を掴むべきでしょう。例えば、刑法で、「違法性阻却事由、責任阻却事由はない。」などと毎回書いている人は、この相場感・大局観が明らかに欠けています。本問でいえば、「団体(法人)の人権享有主体性」を「理論的に必要だから」、「論点だから」という理由でちょっとでも書いてしまった人は、この相場感、大局観という意識を持つべきでしょう。ちなみに、Xの人権享有主体性を否定して各構成員の人権と構成したらどうなるか、集会の自由の保障を受ける行為の意味や敵対的聴衆の法理の適用のあり方が変わるのではないか、というのは、ちょっとだけ考えてみると面白いかもしれない。でも、そんなの答案で触れることじゃありません。
4.CBT方式になって、後からの追記が容易になっています。なので、最初はごく簡潔に書いて、後で時間が余ったら書き足すという方法論が有効です。集会該当性についても、最初はごく簡潔に書いておいて、他に優先事項がなくなってから、初めて書くことを考える、という順序で作業すればよい。この辺りも、先天的にできない人は、演習を繰り返して体得していきましょう。