住宅のガス配管の付合
(最判令7・12・23)

1.当サイトでは、従来、年ごとに、Kindle用の電子書籍として、「最新判例ノート」を公開してきました(当サイト作成の電子書籍一覧)。今年からは、これに代えて、ウェブサイトに解説を掲載することとしました。

2.今回は、最判令7・12・23を紹介します。民法の付合の話ですが、住宅のガス配管が強い付合になるという、多くの受験生が、「当たり前じゃん。」と思うような内容です。

最判令7・12・23より引用。太字強調は筆者。)

 本件建物へのLPガスの供給は、本件建物の外部に設置されている貯蔵設備からガスメーターまでの供給設備及び本件配管によって行われている本件配管は、ガスメーターに接続され、本件建物の外壁を貫通して本件建物の内部に引き込まれていて外壁に固定されており、1階の床下において、システムキッチンのガスコンロに向かうものと本件建物の外部に設置されている給湯器に向かうものとに分岐している。前者は、本件建物の1階の床下断熱材及び床材を貫通し、システムキッチンの収納ボックスに開けられた穴から引き込まれてガスコンロに接続されており、後者は、本件建物の外壁を貫通して外部へと引き出され、コーキング材で外壁に固定された上で給湯器に接続されている。本件配管を本件建物から撤去するためには上記の断熱材や収納ボックス等を取り壊す必要がある

 (中略)

 前記事実関係からすると、本件配管を撤去するためには本件建物及びその住宅設備を相当程度毀損する必要があり、その撤去や本件建物等の復旧には相応の手間や費用を要することが見込まれる。また、本件配管は、本件建物の構造に合わせて設置されているもので、本件建物と一体となって利用されることではじめてその経済的効用を発揮するものである上、撤去後の本件配管の経済的価値が乏しいものであるとうかがわれることからすると、相応の費用等をかけて本件配管を撤去する意義は見いだし難い。これに加え、戸建て住宅に設置されている状態のLPガスの消費設備に係る配管が、当該住宅と別個独立に公の市場において取引されるものであるとはうかがわれないことも考え併せると、本件配管について、本件建物とは別個に所有権の客体となるものと解すべき必然性は乏しいといわざるを得ない。
 以上の事情に照らせば、本件配管については、本件建物に付合したものと解される。また、民法242条ただし書は、不動産に付合した物が、なお当該不動産とは別個の存在を有する場合にのみ適用されるものであるが(最高裁昭和38年(オ)第489号同39年9月8日第三小法廷判決・集民75号181頁参照)、上記事情からすると、本件配管が本件建物と別個の存在を有するとはいえない。よって、本件配管について、民法242条ただし書の適用はないというべきである。

(引用終わり)

(参照条文)民法
(不動産の付合)
242条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない

 こんなの知らなくても、短答で正誤を誤ることはなさそうですし、論文で類似事案が出題されても、迷うことはないでしょう。せいぜい、当てはめの評価の参考、という程度です。もっとも、論文で、配管設備を設置したガス業者が、建物の転得者や賃借人に対して、設備の撤去請求や配管設備使用料相当額の不当利得返還請求などをしてきた事例が出題された場合に、宇奈月温泉事件を想起していきなり権利濫用に飛び付くのではなく、まずは付合で処理することを考えるべきだ、という点は、この機会に確認しておきましょう。

3.本判例では、消費者契約法9条1号適用の前提として付合が問題とされたのですが、司法試験対策としては、消費者契約法9条1号との関係は重要ではありません。今後、重要判例解説等で、本判例の評釈を目にすることがあるでしょう。そこでは、消費者契約法9条1号に関する法律関係についても生真面目に解説してあるでしょうが、そんなのは無視して構わない。このことは、知っておくと、タイムパフォーマンスに資することでしょう。

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