1.法務省から、令和8年司法試験予備試験の出願状況が公表されています。出願者数は、15843人でした。以下は、年別の予備試験の出願者数の推移です。
| 年 | 出願者数 | 前年比 |
| 平成23 | 8971 | --- |
| 平成24 | 9118 | +147 |
| 平成25 | 11255 | +2137 |
| 平成26 | 12622 | +1367 |
| 平成27 | 12543 | -79 |
| 平成28 | 12767 | +224 |
| 平成29 | 13178 | +411 |
| 平成30 | 13746 | +568 |
| 令和元 | 14494 | +748 |
| 令和2 | 15318 | +824 |
| 令和3 | 14317 | -1001 |
| 令和4 | 16145 | +1828 |
| 令和5 | 16704 | +559 |
| 令和6 | 15764 | -940 |
| 令和7 | 15764 | 0 |
| 令和8 | 15843 | +79 |
平成25年、平成26年に出願者は急増しましたが、平成27年にいったん頭打ちとなり、これからは減少傾向に転じるのではないかとも思われました。ところが、平成28年から再び増加に転じ、それ以降は、令和2年まで、その増加幅を拡大させていたのでした。令和3年は急激な減少となっていますが、これは新型コロナウイルス感染症の影響による一時的なものでした。令和4年は、出願期間中にいわゆる「第6波」の感染拡大があったものの、出願者は大幅に増加したのでした。そして、一昨年も出願者は増加を続け、今後も増加傾向が続くのか、とも思われたのでした。
ところが、一昨年は、出願者が大幅に減少しました。コロナ禍の影響を受けた令和3年に匹敵する大幅な減少でありながら、短期的にそのような影響を生じさせるような直接の要因を見出しがたいことから、これは人手不足による採用環境の好転や賃上げ等による職場環境の好転のような基礎的要因の変化によるものだろう、と考えられ、そうであるとすれば、これは長期的に作用するだろう、と考えられたのでした(「令和6年予備試験の出願者数について(1)」)。そして、昨年は、一昨年と全く同じ出願者数でした。全くの同数となったのは偶然ですが、同様の水準となったことは偶然ではなく、上記のような出願者数を左右する基礎的要因に変化がないから、必然的に同様の水準になったのだ、と理解されたのでした(「令和7年予備試験の出願者数について」)。
今年は、昨年から79人の増加となりました。昨年のように全くの同数とはいきませんでしたが、ほぼ誤差の範囲。同水準といって差し支えない数字です。今年についても、出願者数を左右する基礎的要因に変化がないから、必然的に同様の水準になったと理解することができるでしょう。出願者がどんどん増えるという時代は、終わったと考えてよさそうです。
2.出願者数が昨年と同水準とすれば、短答合格者数、論文合格者数も昨年と同じくらいになりそう。直感的にはそうなのですが、本当にそれでよいか。確認しておきましょう。
まず、短答受験者数ですが、予備試験の受験率(出願者ベース)から推計できます。以下は、令和元年以降の受験率の推移です。
| 年 (令和) |
出願者数 | 短答 受験者数 |
受験率 |
| 元 | 14494 | 11780 | 81.2% |
| 2 | 15318 | 10608 | 69.2% |
| 3 | 14317 | 11717 | 81.8% |
| 4 | 16145 | 13004 | 80.5% |
| 5 | 16704 | 13372 | 80.0% |
| 6 | 15764 | 12569 | 79.7% |
| 7 | 15764 | 12432 | 78.8% |
| 8 | 15843 | ??? | ??? |
令和2年は、出願後に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じ、緊急事態宣言の発出により試験日程が延期される等のイレギュラーがありました。そのために、受験率が大きく低下しています。それを除けば、受験率は78~82%の枠内で推移しています。平均的には、80%くらいが穏当にもみえるところ。もっとも、直近でみると、2年連続で80%を下回る数字となっています。これを誤差の範囲の変動とみることもできそうですが、上記1の要因によって、受験しない人が少し増えているのだ、という見方も成立しそうです。ここでは、その点を加味して、受験率は79%と仮定しましょう。そうすると、受験者数は、以下のとおり、12515人と推計できます。
15843×0.79≒12515
昨年(12432人)と比較すると、受験者は83人くらい増加するかも、という感じですが、ほとんど誤差の範囲内といった方がよいでしょう。
3.次に、短答式試験の合格者数を考えます。昨年、当サイトは大発見をしたのでした(「令和7年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。それによれば、令和元年以降、短答は、一貫して3点刻みの「2500人基準」で説明できる合格点になっている。令和元年以降の短答合格者数の変動は、合格点付近の人員分布のブレによる単なる偶然だったのでした。下記は、令和元年以降の短答合格者数の推移です。
| 年 (令和) |
短答 合格者数 |
| 元 | 2696 |
| 2 | 2529 |
| 3 | 2723 |
| 4 | 2829 |
| 5 | 2685 |
| 6 | 2747 |
| 7 | 2744 |
令和元年以降の得点分布を見ると、合格点付近の1点に200~300人くらいが分布しています。なので、「3点刻みで初めて2500人を超える。」という条件だと、理屈の上では3000人を超える合格者数もあり得なくはない。とはいえ、実際の数字を見ると、今のところ、概ね2500~2850人の幅に収まっていることが分かります。令和元年以降の合格者数の平均値は、2707人。そこで、ここでは、短答合格者数を2700人と仮定して試算します。そうすると、短答合格率(対受験者)は、以下のとおり、21.5%と推計できます。
2700÷12515≒21.5%
以下は、これまでの短答合格率(対受験者)の推移です。
| 年 |
短答 合格率 |
| 平成23 | 20.6% |
| 平成24 | 23.8% |
| 平成25 | 21.8% |
| 平成26 | 19.5% |
| 平成27 | 22.1% |
| 平成28 | 23.2% |
| 平成29 | 21.3% |
| 平成30 | 23.8% |
| 令和元 | 22.8% |
| 令和2 | 23.8% |
| 令和3 | 23.2% |
| 令和4 | 21.7% |
| 令和5 | 20.0% |
| 令和6 | 21.8% |
| 令和7 | 22.0% |
| 令和8 | 21.5%? |
今年の短答式試験の数字の上での難易度は、概ね一昨年、昨年と同じくらいになりそうだ、ということが分かります。これは、受験者数の推計値が昨年とほぼ同じで、かつ、短答合格者数の想定も昨年の実績値(2744人)に近いことから、当然といえば当然の結果です。
4.論文はどうか。まずは、論文受験者数を考えます。短答・論文が同一の時期に実施される司法試験と異なり、予備試験は短答・論文が異なる時期に実施されます。そのため、短答に合格しても論文を受験しない人が、一定数生じることになる。以下は、令和元年以降の短答合格者ベースの論文式試験の受験率の推移です。
| 年 (令和) |
短答 合格者数 |
論文 受験者数 |
論文 受験率 |
| 元 | 2696 | 2580 | 95.6% |
| 2 | 2529 | 2439 | 96.4% |
| 3 | 2723 | 2633 | 96.6% |
| 4 | 2829 | 2695 | 95.2% |
| 5 | 2685 | 2562 | 95.4% |
| 6 | 2747 | 2647 | 96.3% |
| 7 | 2744 | 2620 | 95.4% |
| 8 | 2700 | ??? | ??? |
概ね、95~97%の間で推移していることが分かります。そこで、今年の受験率を96%と仮定して、論文受験者数を推計すると、以下のとおり、2592人くらいになりそうだということが分かります。
2700×0.96=2592
次に、論文合格者数です。平成29年以降の論文式試験の合格点及び合格者数は、1つの例外もなく、すべて、「5点刻みで、初めて450人を超える得点が合格点となる。」という、「450人基準」で説明することができます(「令和7年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。ここは、岩盤のように堅い。そんなわけで、今年も、「450人基準」が堅持されるという想定で、試算してみましょう。平成29年以降の合格者数を平均すると473人なので、ここでは、合格者数を470人と仮定します。そうすると、以下のとおり、論文合格率は18.1%と推計できます。
470÷2592≒18.1%
これを、過去の数字と比べてみましょう。
| 年 | 論文 受験者数 |
論文 合格者数 |
論文合格率 |
| 平成23 | 1301 | 123 | 9.4% |
| 平成24 | 1643 | 233 | 14.1% |
| 平成25 | 1932 | 381 | 19.7% |
| 平成26 | 1913 | 392 | 20.4% |
| 平成27 | 2209 | 428 | 19.3% |
| 平成28 | 2327 | 429 | 18.4% |
| 平成29 | 2200 | 469 | 21.3% |
| 平成30 | 2551 | 459 | 17.9% |
| 令和元 | 2580 | 494 | 19.1% |
| 令和2 | 2439 | 464 | 19.0% |
| 令和3 | 2633 | 479 | 18.1% |
| 令和4 | 2695 | 481 | 17.8% |
| 令和5 | 2562 | 487 | 19.0% |
| 令和6 | 2647 | 462 | 17.4% |
| 令和7 | 2620 | 457 | 17.4% |
| 令和8 | 2592? | 470? | 18.1%? |
数字の上での難易度は、一昨年・昨年よりやや易しめという感じです。「やや易しめ」とは具体的に論文式試験でいえば何点に相当するのか。確認しましょう。令和7年司法試験予備試験(論文式試験)得点別人員調(1点刻み) をみると、470位は239点であり、昨年の457位、すなわち、合格点である240点とは1点違います。したがって、論文式試験の点数でいえば、1点だけ易しめ、といえる。これは10科目全部合計しての話ですから、1科目にすると0.1点。まあ、体感ではほとんど分からない位の差でしかありません。そもそも、この差は、単なる偶然の産物です。例年、合格点前後の点数には、1点に10~20人くらいが存在します。したがって5点刻みにすると、その間で50~100人くらいの変動が生じる。なので、「450人基準」、すなわち、5点刻みで最初に450人を超える人数という基準を適用すると、合格者数は450人をそれなりに超える数字になるのが自然なのです。それが、昨年はわずか7人しか超えない457人だった。だから、合格率が低めに出た。それだけのことです。今年もそのような偶然が生じる可能性はそれほど高くないので、昨年より論文合格者数はやや増加しやすいといえる。上記の推計値は、これを反映したものです。
5.以上、みてきたように、今年の数字の上での難易度は、短答は一昨年・昨年と同水準、論文も一昨年・昨年と体感で分からない程度の違いしか生じなさそうです。
最後に、ここまでの数字をまとめておきましょう。下記は、上記の各試算をまとめて直近5年の比較をしたものです。
| 年 (令和) |
短答 受験者数 |
短答 合格者数 |
短答 合格率 |
論文 受験者数 |
論文 合格者数 |
論文 合格率 |
| 4 | 13004 | 2829 | 21.7% | 2695 | 481 | 17.8% |
| 5 | 13372 | 2685 | 20.0% | 2562 | 487 | 19.0% |
| 6 | 12569 | 2747 | 21.8% | 2647 | 462 | 17.4% |
| 7 | 12432 | 2744 | 22.0% | 2620 | 457 | 17.4% |
| 8 | 12515? | 2700? | 21.5%? | 2592? | 470? | 18.1%? |