行政主体間の事務管理
(最判令7・7・14)

1.当サイトでは、従来、年ごとに、Kindle用の電子書籍として、「最新判例ノート」を公開してきました(当サイト作成の電子書籍一覧)。今年からは、これに代えて、ウェブサイトに解説を掲載することとしました。

2.今回は、最判令7・7・14を取り上げます。以下の肢の正誤を考えてみましょう。

 行政主体間においては、民法上の事務管理は成立し得ない。

 この肢を迷わず瞬殺できるようになる、というのが、本判例を学ぶ主要な意味です。主に「公法と私法」という行政法のテーマに属しますが、民法で事務管理を問う肢の1つとして出題される余地もありそうです。

3.本判例は、原文を真面目に読んでも徒労になりがちなので、簡略化した事例を、以下に示しましょう。

【事例】

 Y町は、A社に廃棄物処分を委託した。A社は、X市の区域内にある処分場で、廃棄物を処分していた。
 ところが、A社の処分が不適切であったため、処分場周辺に汚染が生じた。そこで、処分場の所在するX市が浄化対策等の措置をとった。
 X市は、民法の事務管理の規定に基づき、Y町に対し、上記措置にかかった費用を請求した。

 細かいことは気にしないで、判例の立場だけ確認しておきましょう。判例は、事務管理が成立する余地を認めました。なお、判示中の「立地市町村」は上記事例のX市に対応し、「委託をした市町村」はY町に対応します。

(最判令7・7・14より引用。太字強調は筆者。)

 市町村から一般廃棄物の処分の委託を受けた者が、当該市町村の区域外において一般廃棄物処理基準に適合しない処分を行い、これに起因して生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合に、立地市町村がその支障の除去等の措置を講じたときは、当該立地市町村が上記委託をした市町村の事務の管理をしたものとして、事務管理が成立し得ると解するのが相当である。

(引用終わり)

 冒頭で示した下記の肢については、誤りだ、ということですね。

 行政主体間においては、民法上の事務管理は成立し得ない。

 受験対策上は、これだけ押さえておけば、十分でしょう。

4.ちなみに、論文対策としては、「自らの事務でもある場合の事務管理の成否」というマイナー論点に関わるのですが、義務が公法上のものであるなど事案が特殊なだけでなく、判旨も簡潔であり、一般化して覚えたり、当てはめの参考にしたりできるような感じではありません。なお、判示中の「当該立地市町村」は前記事例のX市に対応し、「上記委託をした市町村」はY町に対応します。

(最判令7・7・14より引用。太字強調は筆者。)

 立地市町村が法19条の7第1項に基づきその支障の除去等の措置を講じた場合には、その措置は当該立地市町村の事務としての性質を有するところ、この場合であっても、上記委託をした市町村が本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にあるものとしてこれを講ずる法的義務を負うことに変わりはなく、事務管理の成立が否定されるものではない。そして、以上のことは、上記委託をした者が一般廃棄物の処理に関する事務を共同処理するために市町村によって設置された一部事務組合であっても異なるものではない。

(引用終わり)

 この点に関する民法の観点からの評釈として、吉永一行「「義務なく他人のために事務の管理を始めた者」の意義」新・判例解説Watch◆民法(財産法)No.284があり、ネット上ですぐ読めます。重要性は低いので、特に気にならない人は、読まなくて問題ありません。趣味で事務管理の理解を深めたいとか、既に合格レベルを優に超えているので、さらなる高みを目指したい、という人は、読むとよいでしょう。

5.選択科目が環境法なら、費用請求の法律構成として、事務管理があり得る、ということは、知っておいてもよいと思います。環境法の観点からの評釈として、宮澤俊昭「市町村の区域外における一般廃棄物処理義務に基づく事務管理の成立を認めた事例」新・判例解説Watch◆環境法No.127があり、ネット上ですぐ読めます。

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