1.当サイトでは、従来、年ごとに、Kindle用の電子書籍として、「最新判例ノート」を公開してきました(当サイト作成の電子書籍一覧)。今年からは、これに代えて、ウェブサイトに解説を掲載することとしました。
2.今回は、第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)を取り上げます。(第1次)孔子廟事件大法廷判決(最大判令3・3・24)については、既に政教分離原則に関する重要判例として基本書等でも記載のあるところですから、知っている受験生の方が多いでしょう。同大法廷判決では、敷地使用料の全額を免除した行為が憲法20条3項に違反するとされたのでした。今回は、その後に使用料をきちんと払っていた事案において、有償で使用させることが政教分離原則に反しないか、という点が争われました。
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(第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)より引用。太字強調は筆者。) エ 市長は、最高裁令和元年(行ツ)第222号、同年(行ヒ)第262号同3年2月24日大法廷判決・民集75巻2号29頁(以下「令和3年大法廷判決」という。)が、市長が平成26年3月28日付けでした上記ウの使用料免除処分が憲法20条3項の禁止する宗教的活動に該当すると判断したことを受け、参加人に対し、令和3年5月28日付けで、上記イ、ウの各使用料免除処分をいずれも取り消し、それまでに発生していた公園使用料について納入の通知をした。これに対し、参加人は、上記公園使用料の全額を市に納付し、その後も、公園使用料を順次市に納付した。 (引用終わり) |
3.(第1次)孔子廟事件がどんな事案だったかの復習も兼ねて、ざっと事案をみていきましょう。
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(第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)より引用。太字強調は筆者。) 1 本件は、那覇市(以下「市」という。)の住民である上告人が、市長が市の管理する都市公園内に儒教の祖である孔子等を祀る久米至聖廟(以下「本件施設」といい、その敷地を「本件土地」という。)を設置することを参加人に許可し、これに基づき市が本件土地を本件施設の敷地としての利用に供していることは、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく憲法の諸規定(20条1項後段、3項、89条。以下「政教分離規定」という。)に違反し、参加人に対し本件施設の収去及び本件土地の明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるなどとして、被上告人市長を相手に、地方自治法242条の2第1項3号に基づき、上記の怠る事実の違法確認を求めるとともに、被上告人市を相手に、同項2号に基づき、市長が参加人に対してした本件施設の一部に係る固定資産税の減免処分の無効確認を求める事案である。 (引用終わり) |
受験対策としては、具体的な訴訟物、すなわち、怠る事実の違法確認や固定資産税減免処分の無効確認の部分は気にしなくて構いません。重要なのは、「憲法上の政教分離原則及びそれに基づく憲法の諸規定(20条1項後段、3項、89条。以下「政教分離規定」という。)」という部分。判例は、「憲法上の政教分離原則」を憲法の各条項の上位にある概念とみて、20条1項後段、3項、89条がそれに基づく規定であると位置付けているのです。
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(参照条文)日本国憲法 20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 |
ちなみに、20条の「国」には、地方公共団体が含まれます(村上尚文(清野憲一改訂)『憲法逐条注解(第2版)』(立花書房 2022年)111頁)。なので、本件における那覇市は、同条の適用上、「国」ということになるわけですね。
本件施設は、那覇市が管理する都市公園内にあるのでした。そのため、設置の許可が必要となります。
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(第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)より引用。太字強調は筆者。) 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 (1) 都市公園法5条1項前段は、公園管理者以外の者が都市公園に公園施設を設けようとするときは、条例で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない旨を規定する。 (2)ア 市は、都市公園法2条1項1号所定の都市公園として、市内の久米地域に松山公園(以下「本件公園」という。)を設置し、これを管理している。本件施設は、本件公園内の国公有地上に設置された、儒教の祖である孔子やその4人の門弟である四配等を祀る廟である。 (引用終わり) |
都市公園法は、行政法で出題可能性のある法令なので、確認をしておきましょう。
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(参照条文)都市公園法 (定義) (都市公園の管理) (公園管理者以外の者の公園施設の設置等) |
使用料及びその免除については、条例の方で規定されています。
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(第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)より引用。太字強調は筆者。) 那覇市公園条例(1970年那覇市条例第6号。令和5年那覇市条例第28号による改正前のもの。以下「公園条例」という。)は、都市公園法5条1項前段に規定する公園施設の設置許可(以下「公園施設設置許可」という。)を受けた者は、占用面積1㎡につき1か月360円の使用料を納付しなければならない旨を規定するとともに(11条1項、別表第1)、市長は、所定の場合には、規則で定めるところにより使用料の全部又は一部を免除することができる旨を規定している(11条の2。以下、同条の規定による使用料の免除処分を「使用料免除処分」という。)。 (1) 都市公園法5条1項前段は、公園管理者以外の者が都市公園に公園施設を設けようとするときは、条例で定める事項を記載した申請書を公園管理者に提出してその許可を受けなければならない旨を規定する。 (引用終わり) |
詳しい事実関係については、「あーこんなんだったな。」という感じで、ざっと読み流せばいいでしょう。なお、「釋奠祭禮」は、「せきてんさいれい」と読みます(詳細は、久米至聖廟のウェブサイトを参照)。
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(第2次孔子廟事件判決(最判令7・3・17)より引用。太字強調は筆者。) 本件施設の建物等の所有者は甲である。甲は、本件施設、道教の神等を祀る天尊廟及び航海安全の守護神を祀る天妃宮の公開、久米三十六姓(約600年前から約300年間にわたり、現在の中国福建省又はその周辺地域から琉球に渡来してきた人々)の歴史研究、論語を中心とする東洋文化の普及等を目的とする一般社団法人であり、定款上、上記目的が明記されるとともに、その正会員の資格が久米三十六姓の末えいに限定されている。
イ 本件施設は、大成殿、啓聖祠、明倫堂・図書館、至聖門、御路、御庭空間等によって構成され、その占用面積は1335㎡である。本件施設の出入口に当たる至聖門には三つの扉があり、甲の説明によれば、孔子の霊のためのものとされている中央の扉は、1年に1度、後記エの釋奠祭禮の日にのみ開かれ、孔子の霊は、至聖門を通過して御路(御庭空間の中央を至聖門から大成殿に向かって伸びる通路)を進み、大成殿へ上るとされている。
ウ 本件施設は、拝観時間が午前9時から午後5時まで、拝観料は無料であり、その敷地(本件土地)については、至聖門、明倫堂・図書館、フェンス等によって本件公園の他の部分から仕切られているものの、上記拝観時間内は一般市民が自由に出入りできる状態にある。 エ 本件施設では、平成25年以降、毎年、孔子の生誕の日とされる9月28日に、供物を並べて孔子の霊を迎え、上香、祝文奉読等をした後に、これを送り返すという内容の行事である釋奠祭禮が行われている。甲においては、釋奠祭禮の挙行がその事業として定款上明記されるとともに、久米三十六姓の末えい以外の者がこれを行うことについては許容することができないとされている。 (3)ア 久米三十六姓は、琉球王国の繁栄を支えた職能集団であり、かつて久米地域に居住し、17世紀に同地域に孔子等を祀る至聖廟を建立するとともに、18世紀にその隣接地に琉球における最初の公立学校とされている明倫堂(以下、上記至聖廟と併せて「当初の至聖廟等」という。)を建立した。当初の至聖廟等及びその敷地は、沖縄県が設置された後、社寺に類する施設として国有とされ、大正4年に甲の前身である社団法人久米崇聖会(以下、甲と区別することなく「甲」という。)に譲与された。当初の至聖廟等は、第二次世界大戦の戦災により焼失したが、昭和49年ないし昭和50年頃、甲が所有する那覇市若狭所在の土地上に、天尊廟及び天妃宮と共に、至聖廟及び明倫堂(以下、両者を併せて「旧至聖廟等」という。)が再建され、甲がこれらを維持管理するようになった。
イ 甲は、平成11年3月、市が旧久米郵便局の跡地を国から買い取り、本件公園の一部として取り込むとの情報を得たことから、同跡地に至聖廟を移転して久米地域に回帰すべく、平成12年12月、市に対する要請活動を開始した。市は、平成11年4月に策定した那覇市都市計画マスタープランにおいて、本件公園の所在する那覇市西地域に係るまちづくりの基本方針として「福州園や天妃宮などを核とし歴史性を活かしたクニンダのまちづくり」を掲げていた。市においては、平成15年に松山公園周辺土地利用計画(案)策定業務に係る委員会及びその作業部会が複数回開かれ、有識者等が出席し、本件公園周辺の土地利用計画に関して議論が行われ、その際に出された意見の中には至聖廟の宗教性を問題視するものがあった。 ウ 本件土地利用計画案の策定を受け、市において、本件公園の整備に向けた具体的な設計等の業務が行われ、同業務について、平成20年7月に平成19年度松山公園実施設計業務委託報告書が提出された。同報告書においては、忘れられつつあるクニンダの歴史・文化を取り戻すためのシンボルとして本件施設が位置付けられるとともに、大成殿及び明倫堂の公園施設としての設置の可否についても検討され、前記アの至聖廟が琉球王朝時代に設立され、以来、久米村の人々を中心に親しまれていることや、明倫堂は琉球における公立学校の始まりとされており、現在も歴史文化的な講座が開設される、市民、地域に開かれた施設であることから、体験学習施設(都市公園法施行令5条5項1号)ないし歴史上又は学術上価値の高いもの(同項2号)として公園施設と位置付けることができると結論付けられていた。 (引用終わり) |
最後の公園施設該当性については、関係する法令を確認しておきましょう。
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(参照条文) ◯都市公園法施行令5条5項 |
3.最高裁の判断については、次回、詳しくみていきます。