令和7年司法試験の結果について(13)
~合格者平均年齢~

1.今回は、久しぶりに司法試験の話。以下は、司法試験における短答・論文段階の合格者の平均年齢等の推移です。年号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

年 短答
合格者
短答
前年比
論文
合格者
論文
前年比
短答・論文
の年齢差
18 29.92 --- 28.87 --- 1.05
19 30.16 +0.24 29.20 +0.33 0.96
20 30.36 +0.20 28.98 -0.22 1.38
21 30.4 +0.04 28.84 -0.14 1.56
22 30.8 +0.4 29.07 +0.23 1.73
23 30.7 -0.1 28.50 -0.57 2.20
24 30.9 +0.2 28.54 +0.04 2.36
25 31.0 +0.1 28.37 -0.17 2.63
26 31.3 +0.3 28.2 -0.17 3.1
27 32.2 +0.9 29.1 +0.9 3.1
28 32.1 -0.1 28.3 -0.8 3.8
29 32.0 -0.1 28.8 +0.5 3.2
30 31.8 -0.2 28.8 0 3.0
令和元 31.6 -0.2 28.9 +0.1 2.7
令和2 30.9 -0.7 28.4 -0.5 2.5
令和3 30.7 -0.2 28.3 -0.1 2.4
令和4 30.7 0 28.3 0 2.4
令和5 29.1 -1.6 26.6 -1.7 2.5
令和6 29.3 +0.2 26.9 +0.3 2.4
令和7 29.5 +0.2 26.8 -0.1 2.7

 一貫して、短答合格者の方が、論文合格者よりも高齢となっています。短答は知識重視なので、若手が苦戦し、高齢受験者が受かりやすい。そのため、短答合格者の年齢は、高齢になりやすくなります。一方、論文は、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい。」法則が成立する(「令和7年司法試験の結果について(8)~修了年度別、未修・既修別の合格率~」)ので、受かりやすい人は若いうちにあっさり合格し、受かりにくい人は高齢化しつつ、合格できずに滞留することになる。そのため、論文合格者の年齢は、若年化しやすくなるというわけです。もっとも、司法試験には受験回数制限があるので、5年を超える滞留者は予備試験の方に流れていきます。そのため、司法試験の論文における若年化は、概ね5歳以内に収まると考えられます。実際の数字も、その範囲内に収まっていることが分かります。
 平成28年までは、論文段階での若年化の幅は拡大傾向にありました。それが、平成29年以降、若年化の幅は縮小傾向に転じ、令和に入ってからは、概ね2.5歳前後で推移しています。当サイトでは、平成27年から、規範の明示と事実の摘示に特化した参考答案を掲載するようになりました。若年化の幅が縮小に転じたのと、時期的に一致します。
  一昨年は、短答・論文ともに1歳半強の若年化が生じました。過去に例のないような、大幅な若年化でした。その要因は、在学中受験の開始によって単純に若い受験者が増えたということに加え、短答・論文ともに、在学中受験者の参入によって、3回目以降の受験者の一定数が押し出されてしまった、 すなわち、3回目以降の受験者が不合格になって、代わりに在学中受験者が合格するという構図が生じたことにあると考えられたのでした(「令和5年司法試験の結果について(12)」)。昨年は、短答・論文とも、わずかながら高齢化しました。今年は、短答がわずかに高齢化、論文はわずかに若年化しています。とはいえ、一昨年と比較すると、横ばいと表現してよい変化です。

2.平成28年から令和3年までの短答の平均年齢をみると、かなり緩やかではあるものの、若年化傾向であったことに気付きます。これは、主に受験回数の少ない受験者の短答合格率の上昇に起因するものです。最新のデータで確認してみましょう。以下は、令和7年12月12日に実施された第122回法科大学院等特別委員会の配布資料に含まれている「令和7年司法試験受験状況」に基づく在学中受験者及び法科大学院修了生の資格で受験した者の受験回数別の短答合格率(受験者ベース)です。

受験回数 短答合格率
在学中 80.62%
1回目 58.72%
2回目 72.81%
3回目 65.42%
4回目 62.06%
5回目 63.37%

 従来の傾向では、受験回数が増えると、短答合格率が上がっていきました。受験回数が増えるほど、短答の知識をインプットできる時間を確保できるわけですから、これは自然な傾向でした。それが、平成27年頃から、必ずしもそのような傾向ではなくなってきています。今年も、受験回数が増えても短答合格率は上がらない、むしろ、下がってしまっている、という状況になっています。なお、「1回目」の短答合格率が低いのは、「1回目」のカテゴリーが在学中受験をしなかった、あるいは、できなかった層だからです。
 受験回数が増えると短答合格率が下がる、というのは、逆にいえば、新規参入者の短答合格率が高い、ということを意味します。その主な原因は、法科大学院の入学定員及び志願者数の減少と、修了認定の厳格化にありました。周知のように、法科大学院の入学定員及び志願者数は、大幅に減少しました。現在では、かつてのように、「誰でも簡単に法曹になれるらしい。」という安易な感覚で法科大学院に入学する者は、ほとんどいないでしょう。また、その修了認定も厳格化されており、かつて短答で合格できなかったようなレベルの人のうちの一定数は、そもそも法科大学院を修了できなくなりました(「法科大学院標準修業年限修了者数・修了率の推移」参照)。共通到達度確認試験が進級判定に用いられるようになったことも、この傾向を後押ししていました(「共通到達度確認試験の進級判定への活用方法」、「共通到達度確認試験(試行試験)成績と司法試験(短答式試験)成績の相関分析」)。もっとも、最近では、上記の傾向は一段落したとみえます。これは、法科大学院の入学定員及び志願者数の減少傾向、修了率の低下傾向に歯止めがかかったことを反映しているとみることができるでしょう。
 以上のことから分かるのは、2回目以降の受験者も、短答で気を抜いてはいけない、ということです。「昨年は短答余裕だったから、今年も大丈夫だろう。」とたかをくくっていると、やられてしまうかもしれない。今の新規参入者は短答も普通に強い、という意識を持っておくべきです。なお、今年は、5回目受験生の短答合格率が4回目受験生より少し高い数字になっています。これは、最近見られるようになった傾向で、短答に自信がないレベルの人は、5回目を受験しなくなったことによるのだろうと思います。

3.論文合格者の平均年齢は、短答段階から2.7歳の若年化となりました。これは、受験回数が増えると論文合格率が下がるためです。以下は、「令和7年司法試験受験状況」に基づく在学中受験者及び法科大学院修了生の資格で受験した者の受験回数別の論文合格率(短答合格者ベース)です。

受験回数 論文合格率
在学中 65.32%
1回目 43.64%
2回目 40.62%
3回目 32.48%
4回目 10.29%
5回目 11.93%

 受験回数が増えると、顕著に合格率が下がっていく。短答とは比較にならないくらい、顕著に差が付いていることが分かるでしょう。「1回目」のカテゴリーは在学中受験をしなかった、あるいは、できなかった層なのですが、それでも、2回目以降より高い合格率となっていることにも、注目すべきでしょう。なお、今年は5回目受験生の論文合格率が4回目受験生より少し高い数字になっています。これは、短答と同様に最近見られるようになった傾向で、4回受験して全然成績が伸びなかった人が5回目を受験しなくなったことによるのだろうと思います。
 当サイトで繰り返し説明しているとおり、論文式試験には、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい。」法則があります。規範の明示と事実の摘示を軽視する人や、問題文から論点を素早く抽出する反射神経、速く文字を書く能力等が劣る者は、どんなに勉強量を増やしても、受かりにくいことに変わりはない。受かりにくい特性を強く持つ者が滞留していくので、受験回数が増えれば増えるほど、合格率は下がっていくのです。ただし、速く文字を書く能力については、来年以降、CBTでの実施となることによって、速くキーボード入力する能力へと置き換わることになります。来年以降、その影響が数字に表れるかどうか。注視する必要があるでしょう。
 加えて、4回目以降の合格率が極端に下がっていることにも、注意が必要です。これは、在学中受験が始まった一昨年からみられるようになった傾向です。当時は、3回目の段階で既に顕著な合格率の下落が生じていました。確認しておきましょう。以下は、在学中受験開始前の令和4年と、在学中受験初年である令和5年の受験回数別論文合格率の比較です。

令和4年
受験回数 論文合格率
在学中 ---
1回目 64.05%
2回目 41.32%
3回目 32.82%
4回目 21.26%
5回目 24.42%

 

令和5年
受験回数 論文合格率
在学中 68.27%
1回目 64.94%
2回目 30.23%
3回目 15.11%
4回目 15.33%
5回目 10.94%

 在学中受験の開始によって、3回目以降の合格率の低下がより顕著になっていることが確認できます。在学中受験は、「受かりにくい人」をますます受かりにくくしている。「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい。」法則の作用が、ますます強まったといえるでしょう。3回目以降の受験者は、このことを十分に意識して論文対策をしないと、容易には合格できません。

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