令和7年司法試験短答式試験の結果について(1)

1.令和7年司法試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は、81点でした。以下は、憲民刑の3科目、175点満点になった平成27年以降の短答式試験の合格点の推移です。

年 合格点
平成27 114
平成28 114
平成29 108
平成30 108
令和元 108
令和2 93
令和3 99
令和4 96
令和5 99
令和6 93
令和7 81

 平成27年及び平成28年は114点、平成29年から令和元年までは108点だったものが、令和2年に一気に15点も下がり、それ以降は、毎年合格点を変動させつつも、90点台で推移し、極端な合格点の変動は生じていなかったのでした。
 それが、今年は12点も下落し、81点となりました。これは、令和2年以降みられなかった新しい現象であるといえます。

2.以下は、直近5年の短答合格者数、短答合格率(受験者ベース)の推移です。

年
(令和)
短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
3 2672 78.0%
4 2494 80.9%
5 3149 80.1%
6 2958 78.2%
7 2902 75.6%

 令和4年より以前は、「1500人程度」(「法曹養成制度改革の更なる推進について」 平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)を意識しつつ、一定の論文合格者数を念頭に置きながら、短答・論文でバランスのよい合格率となるように、短答合格者数が決められているとみえました(「令和4年司法試験の結果について(1)」)。それが、令和5年の在学中受験開始による受験者増をきっかけにして、現在では、合格者数はその時々のイレギュラーな事情に左右され、一定の決定基準を見出すことが難しい状況になっています(「令和6年司法試験短答式試験の結果について(1)」、「令和6年司法試験の結果について(1)~合格者数の決定基準~」)。もっとも、合格率でみると、概ね8割前後の水準で推移していました。そのような目で見ると、今年は、直近の数字より低めの水準になっていることが分かります。

3.合格点の急落と合格率の低下、その原因は、はっきりしています。
 司法試験の短答式試験では、各科目に最低ラインがあり、1科目でもこれを下回ると、それだけで不合格になります。合計得点の合格点は採点の結果を見て事後的に決定されますが、各科目の最低ラインは、事前に満点の4割と決まっているのでした。

(「司法試験の方式・内容等について」(令和6年12月4日司法試験考査委員会議申合せ事項)より引用。太字強調は筆者。)

第4 採点及び成績評価等の実施方法・基準

1 短答式試験による一次評価

(1) 短答式試験の合格に必要な成績を得た者の判定方法

 短答式試験の各科目の合計点をもって同試験の合格に必要な成績を得た者の判定を行う。ただし、短答式試験において最低ラインに達していない科目が1科目でもある者については、それだけで不合格とする。

(2) 短答式試験における最低ライン

 最低ラインは、各科目における満点の40%点とする。

(引用終わり)

 司法試験委員会が「今年も合格率は80%くらいにしたいよね。」と思っていても、受験者の2割を超える人数が最低ライン未満になっていたら、合格率は80%未満にならざるを得ないというわけです。とはいえ、「そんな極端なこと、あるわけないだろ。」と思うのが普通です。ですが、今年は、そんな極端なことが生じたのでした。
 今年は、3837人が受験して、22人が途中欠席、834人がいずれかの科目で最低ライン未満になっています。残るは、2981人。仮に、この2981人を全員合格させたとしても、以下のとおり、合格率は77.6%にしかなりません。

 2981÷3837≒77.6%

 すなわち、今年は、これを超える合格率にしたくても、できなかったのです。

4.今年、各科目の最低ラインをクリアした人の合計得点のうち、最も低いものは、71点でした。これは、各科目の最低ライン(憲法20点、民法30点、刑法20点)を合計した70点を、わずかに1点上回っただけの数字です。さすがに、この得点を合格点にしてしまったのでは、各科目の最低ラインとは別に合計得点で合格点を設定している意味がない。それで、その10点上の81点が合格点とされたのでしょう。この81点という点数は、1点刻みにして、初めて2900人を超える数字です。なんとなく落ち着きがいい。

得点 人員 累計
83 16 2864
82 23 2887
81 15 2902
80 12 2914
79 17 2931

 合格率をみても、81点なら、受験者合格率は75.6%になり、ギリギリ「75%~80%」というそれっぽい枠に収まります。こうしたことがあって、「81点でいいんじゃない。」という感じになった。今年に関しては、そんなところなのだろうと思います。

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