令和7年司法試験の受験予定者数について(1)

1.令和7年司法試験の受験予定者が公表されています。受験予定者は、4070人でした。以下は、直近5年の受験予定者数の推移です。一昨年から在学中受験が可能となりましたので、それ以前との比較のため、括弧書で在学中受験を除いたものを記載しました。

年
(令和)
受験予定者数 前年比
3 3733 -367
4 3339 -394
5 4165
(3051)
+826
(-288)
6 4026
(2745)
-139
(-306)
7 4070
(2684)
+44
(-61)

 令和4年まで、受験予定者は減少傾向を続けていましたが、一昨年は、大幅な増加となりました。もっとも、在学中受験を除いた数字でみると減少傾向が継続していることから、これは在学中受験が可能になったことによる一時的な現象だろう、と考えられたのでした(「令和5年司法試験の受験予定者数について(1)」)。翌年以降は、また元に戻るはず。昨年は、その予測どおり、従来の減少傾向をそのまま引き継いだような結果となったのでした。
 今年は、ほぼ横ばい
の状態で、ついに下げ止まったのかな、と感じさせます。どうしてそうなっているのか、その要因を考えてみましょう。

2.そもそも、司法試験の受験者は、どのような要因で変動するのか。司法試験の受験資格を取得するルートは、法科大学院修了と予備試験合格の2つです。したがって、法科大学院修了者数と予備試験合格者数の変動に対応すると考えるのが自然でしょう。このうち、予備試験の合格者数については、平成27年以降、400~500人で推移しており、大きな変動がないという状況が続いています(「令和6年予備試験口述試験(最終)結果について(1)」)。そうなると、残りの要因は法科大学院修了者数の変動ということになる。実際のところ、平成時代の一貫した司法試験受験者の減少は、概ね法科大学院修了生の減少ということで、説明できたのです。確認しておきましょう。以下は、平成25年度以降の年度別の法科大学院入学定員数・実入学者数及び修了者数の推移です(「志願者数・入学定員数・入学者数・入学定員充足率の推移」、「法科大学院修了者数の推移」参照)。

年度 入学定員 前年比 実入学者 前年比 修了者数 前年度比
平成25 4261 -223 2698 -452 3037 -422
平成26 3809 -452 2272 -426 2511 -526
平成27 3169 -640 2201 -71 2190 -321
平成28 2724 -445 1857 -344 1872 -318
平成29 2566 -158 1704 -153 1622 -250
平成30 2330 -236 1621 -83 1456 -166
令和元 2253 -77 1862 +241 1307 -149
令和2 2233 -20 1711 -151 1403 +96
令和3 2233 0 1724 +13 1321 -82
令和4 2233 0 1968 +244 1229 -92
令和5 2197 -36 1971 +3 1543 +314
令和6 2197 0 2076 +105 --- ---

 平成の時代には、入学定員、実入学者、修了者のいずれもが一貫して減少を続けていたことが分かります。これが、司法試験受験者減少の主な要因となっていたのでした。
 それが、令和の時代になって、変化が生じます。入学定員は完全に下げ止まり、実入学者、修了者は増加に転じる勢いです。令和5年度修了者は、314人も増えている。現時点で令和6年度修了者数は不明ですが、実入学者数の推移をみる限り、減少するとは考えにくい。単純に考えるなら、受験予定者はもっと増えてしかるべきではないか。実際には、上記1でみたとおり、受験予定者数は、減少ないしほぼ横ばいで推移しています。このことは、法科大学院修了者数の変動だけでは、直近の受験者の変動を的確に捉えきれないことを意味しています。

3.では、上記以外の司法試験受験者数の変動要因とは、何か。令和5年までは、司法試験の合格率が、その要因といえました。合格率が上下すると、それに対応して、不合格者数が変動する。不合格者の相当数は翌年も受験するので、これが受験者数の変動要因となるのです。実際の数字をみてみましょう。以下は、令和時代の年別の2回目以降受験予定者数と受験者合格率の推移です。

年
(令和)
2回目以降
受験予定者数
前年比 受験者
合格率
元 3094 --- 33.6%
2 2395 -699 39.1%
3 1949 -446 41.5%
4 1610 -339 45.5%
5 1455 -155 45.3%
6 1812 +357 42.1%
7 1940 +128 ---

 令和元年から令和5年までは、受験者合格率は上昇傾向を続けていました。この合格率上昇傾向の下で、滞留者もどんどん合格していき、滞留者は減少傾向となっていた。このことが、令和5年までの受験者減少の要因となっていたのでした。このように、令和に入ってから令和5年までの司法試験受験者の減少傾向は、合格率の上昇によってうまく説明できたのでした。
 ところが、令和5年以降は、在学中受験の開始で受験者が大幅に増加し、全体の合格率は下落に転じました。その結果、滞留者は増加に転じています。このことは、司法試験受験者数の増加要因となります。しかし実際には、上記1でみたとおり、受験予定者数は、減少ないしほぼ横ばいで推移している。このように、直近の受験者数の推移は、司法試験の合格率によっても、うまく説明できなくなっているのです。

4.では、真の要因は一体何か。この謎を解く鍵は、在学中受験にあります。もっとも、在学中受験資格での受験者自体は、令和5年は1114人、令和6年は1281人、令和7年は1386人と、むしろ増えています。在学中受験者数に着目しただけでは、何も見えてこない。
 重要なのは、その合格率です。以下は、在学中受験の始まった令和5年と、その翌年の令和6年の在学中受験者と法科大学院修了生の受験者合格率の比較表です。

年
(令和)
在学中
受験者
合格率
法科大学院
修了者の
受験者合格率
5 59.3% 32.6%
6 55.1% 22.7%

 在学中受験者は、半数以上が合格していることが分かります。これに対し、法科大学院修了資格の受験者は3割・2割程度しか受かっていない。ここから読み取れるのは、「在学中受験でどんどん抜けていく者がいる一方で、残った滞留者は、在学中受験者に追い抜かれて取り残されていく。」という構図です。在学中受験で合格した人も、その後に法科大学院を修了することには変わりがないので、法科大学院修了者としてカウントされる。みかけの法科大学院修了者が増加傾向になっていても、実際には、在学中受験でどんどん抜けていっているので、修了した後の司法試験は受験していないというわけです。このことを理解すると、「法科大学院修了者も滞留者も増えているのに、司法試験受験予定者数がそれほど増えない。」という謎が解けるのでした。

5.当サイトでは、以前から、とりわけ論文式試験において、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい。」法則があると、説明してきました。そして、在学中受験は、その作用をさらに強めている。このことは、とりわけ3回目以降の受験者にとって顕著だったのでした(「令和6年司法試験の結果について(12)~合格者平均年齢~」、「令和6年司法試験の結果について(13)~若手優遇策の歴史~」)。このことが、司法試験受験予定者数の推移として表れている。1つ1つの数字を断片的にみると分からないことでも、その背後にある法則性に着目することで見えてくることもある。今回のことは、その一例といえるでしょう。

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