1.以下は、直近5年の職種別の受験者数の推移です。ただし、法務省の公表する資料において、「公務員」、「教職員」、「会社員」、「法律事務所事務員」、「塾教師」、「自営業」とされているカテゴリーは、まとめて「有職者」として表記し、「法科大学院以外大学院生」及び「その他」のカテゴリーは省略しています(※1)。なお、「無職」には、高校生及びアルバイトが含まれ(※2)、令和5年以降は、出願時年度大学卒業予定・翌年度法科大学院入学予定の大学生が一定数混入していると考えられます(「令和5年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。
※1 「その他」のカテゴリーには相応の受験者が存在するものの、家庭教師(属性は無職に近い。)、独立行政法人職員(属性は公務員・会社員に近い。)等が雑多に含まれ、分析に適さないため除いています。
※2 「受験願書の記入要領」参照。
| 年 | 有職者 | 法科大学院生 | 大学生 | 無職 |
| 令和 2 |
3879 | 1064 | 3141 | 2116 |
| 令和 3 |
4360 | 1058 | 3508 | 2371 |
| 令和 4 |
5143 | 1067 | 3786 | 2514 |
| 令和 5 |
5663 | 496 | 3953 | 2704 |
| 令和 6 |
5350 | 411 | 3659 | 2669 |
令和4年はすべての職種で受験者が増加しましたが、令和5年は法科大学院生の受験が激減し、在学中受験が可能になったことによるものと考えられたのでした(「令和5年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。
それが、令和6年は、すべての職種で受験者が減少しています。これは、前回の記事(「令和6年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)でみた社会人世代の受験者減少と符合します。そこでは、人手不足による採用環境の好転、賃上げ等による職場環境の好転によって社会人が法曹を目指さなくなった可能性が想起されたのでした。大学生の受験者減少に関しては、在学中受験・法曹コースの影響もあるのでしょうが、令和5年には受験者が増加していたことを踏まえると、令和6年固有の事情として、採用環境の好転によって大学生が普通に就職することを考えるようになった、という説明も成り立ちそうです。
2.以下は、令和6年の職種別最終合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。
| 職種 | 受験者数 | 最終 合格者数 |
最終合格率 (対受験者) |
| 有職者 | 5350 | 89 | 1.66% |
| 法科大学院生 | 411 | 8 | 1.94% |
| 大学生 | 3659 | 279 | 7.63% |
| 無職 | 2669 | 67 | 2.51% |
概ね例年どおりの結果になっているのが、有職者と大学生です。これは、前回の記事で説明した年代別最終合格率に対応しています(「令和6年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)。すなわち、高齢受験者の多い有職者は最終合格率が低く、若手受験者の多い大学生は最終合格率が高いというわけです。有職者は、「仕事を続けながら法曹になれる。」と安易に考えるのではなく、「ただし、合格できるのは毎年2%に満たない。」という事実も認識した上で受験を考える必要があるでしょう。
他方、法科大学院生と無職については、令和5年に生じた変化をそのまま受け継ぐ形になっています。すなわち、法科大学院生のカテゴリーは、受験者が未修1年生に限られてしまった結果(※3)、合格率が極端に低くなり、無職のカテゴリーは、一部大学生が混入してしまった結果、有職者よりやや高い数字になっているのでした(「令和5年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。
※3 厳密には、留年してしまった人も含まれますが、属性としては類似するので、ここでは無視しています。
3.短答合格率を見てみましょう。以下は、令和6年の職種別短答合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。
| 職種 | 受験者数 | 短答 合格者数 |
短答 合格率 |
| 有職者 | 5350 | 1147 | 21.4% |
| 法科大学院生 | 411 | 50 | 12.1% |
| 大学生 | 3659 | 770 | 21.0% |
| 無職 | 2669 | 666 | 24.9% |
まず、法科大学院生の短答合格率が顕著に低いのは、受験者が未修1年生に限られてしまった結果です。他方、有職者と大学生が同じく無職より低めの水準であるのは、いずれも勉強時間の確保に課題があるためです。
無職は専業受験生が属するカテゴリーなので、本来ならもっと短答合格率は高いはずであるところ、一部大学生が混入してしまった結果、やや低めの数字になっているのでした(「令和5年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。それでも、他のカテゴリーと比較して高い水準にあるのは、短答の特性をよく表しています。短答は、勉強時間さえ確保すれば、順当に結果が出せる。短答に関しては、「10年以上真面目に勉強したけど、一度も合格できない。」なんてことは、ほとんどないのです。
4.論文ではどうか。以下は、令和6年の職種別論文合格率(短答合格者ベース)等をまとめたものです。
| 職種 | 短答 合格者数 |
論文 合格者数 |
論文 合格率 |
| 有職者 | 1147 | 95 | 8.2% |
| 法科大学院生 | 50 | 9 | 18.0% |
| 大学生 | 770 | 281 | 36.4% |
| 無職 | 666 | 70 | 10.5% |
若手の大学生が一人勝ち状態であることが分かります。これが、若手優遇策の効果だったのでした(「令和6年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)。高齢受験者の多い有職者・無職は苦戦を強いられています。もっとも、無職は、一部大学生が混入してしまった結果、やや高めの数字になっています(「令和5年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。本来なら、もっと低い数字でも、おかしくありません。論文に関しては、「10年以上真面目に勉強したけど、一度も合格できない。」なんてことも、普通にあるのです。