令和6年予備試験口述試験(最終)結果について(3)

1.口述試験結果の発表と同時に、参考情報として、短答、論文段階を含めた詳細なデータが公表されます。
 以下は、直近5年の年齢層別の受験者数の推移です。

年齢層 令和2 令和3 令和4 令和5 令和6
19歳以下 100 151 125 134 127
20~24歳 3573 3952 4320 4172 3818
25~29歳 1200 1274 1422 1349 1234
30~34歳 962 1063 1177 1173 1081
35~39歳 908 1057 1131 1220 1077
40~44歳 899 941 1037 1026 985
45~49歳 810 898 991 1104 1020
50~54歳 769 844 946 1065 1017
55~59歳 616 638 766 862 850
60~64歳 388 440 540 642 672
65~69歳 211 256 288 346 372
70~74歳 129 150 188 192 208
75~79歳 30 31 50 65 90
80歳以上 13 22 23 22 18

 これまでは、どの世代も、受験者は概ね増加傾向でした。それが、令和5年になって、20代の受験者が減少に転じます。これは、在学中受験・法曹コースの影響によるものと考えれば、特に意外ではありません。ところが、令和6年は、30代から50代までの世代でも、受験者がすべて減少するという事態になりました。これは、意外なことです。
 令和6年は、コロナ禍以降、順調に増加すると思われていた出願者が、一転して減少した年でした。当サイトでは、人手不足による採用環境の好転、賃上げ等による職場環境の好転によって社会人が法曹を目指さなくなった可能性を想起していました(「令和6年予備試験の出願者数について(1)」)。上記の結果は、それと整合するものといえるでしょう。採用環境・職場環境の好転が原因であると考えると、既にリタイアしていそうな60代以降が増加傾向を維持していることも納得できます。

2.以下は、令和6年の年齢層別最終合格者数、受験者ベースの最終合格率等をまとめたものです。

年齢層 受験者数 最終
合格者数
最終合格率
(対受験者)
19歳以下 127 4 3.14%
20~24歳 3818 285 7.46%
25~29歳 1234 55 4.45%
30~34歳 1081 40 3.70%
35~39歳 1077 24 2.22%
40~44歳 985 16 1.62%
45~49歳 1020 15 1.47%
50~54歳 1017 5 0.49%
55~59歳 850 3 0.35%
60~64歳 672 1 0.14%
65~69歳 372 1 0.26%
70~74歳 208 0 0%
75~79歳 90 0 0%
80歳以上 18 0 0%

 20代前半が最も高いものの、それでも7.4%です。40代は1%程度、50代以降はほとんど絶望的な数字になっている。「よくこんな試験受けてんな。」と、感じさせます。よく、「予備試験は抜け穴として安易に利用されている。」というような指摘がされがちですが、実際には針に糸を通すような非常に狭いルートであって、「法科大学院に行かなくても、予備ルートなら簡単に法曹になれる。」等と安易に考えて受験するのは、とても危険です。仕事をしながら予備ルートで法曹になる、というのは魅力のある選択肢ですが、受験するのであれば、相応の覚悟が必要です。令和6年における40代以上の受験者は5232人で、合格者は41人です。毎年41人合格するとして、5232人全員が合格するには、単純計算で127年程度を要する。何となく勉強を続けて毎年受験していれば、いつかは受かるだろう、というのは、とても甘い考えです。

3.上記2のとおり、受験者ベースの最終合格率をみると、20代前半が最も高いわけですが、短答・論文段階に分けて見てみると、見え方が違ってきます。以下は、年齢層別の短答合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。  

年齢層 受験者数 短答
合格者数
短答合格率
(対受験者)
19歳以下 127 7 5.51%
20~24歳 3818 799 20.92%
25~29歳 1234 242 19.61%
30~34歳 1081 261 24.14%
35~39歳 1077 234 21.72%
40~44歳 985 239 24.26%
45~49歳 1020 245 24.01%
50~54歳 1017 230 22.61%
55~59歳 850 211 24.82%
60~64歳 672 146 21.72%
65~69歳 372 91 24.46%
70~74歳 208 29 13.94%
75~79歳 90 12 13.33%
80歳以上 18 1 5.55%

 短答段階では、50代後半がトップであることが分かります。40代前半から60代後半までの年代は、すべて20代を超える合格率です。19歳以下に至っては、5%程度で、70代(13%)にも劣る有様です。「はっはっは。甘いんじゃよ若造め。」と言われても、仕方のない結果だといえるでしょう(※)。短答は単純に知識で差が付くので、苦節10年、20年と勉強を続けてきた高齢受験者が有利になるのです。仮に、短答だけで合否を決する仕組みであれば、若手は合格することが難しい試験となっていたことでしょう。
 ※ ただし、令和6年に関しては、20代前半が2割超え、30代前半が24%という高めの短答合格率となっており、若手も例年よりは健闘したといえます。

4.それが、論文段階になると、全く違う景色になります。以下は、年齢層別の論文合格率(短答合格者ベース)等をまとめたものです。  

年齢層 短答
合格者数
論文
合格者数
論文合格率
(対短答合格)
19歳以下 7 4 57.14%
20~24歳 799 287 35.91%
25~29歳 242 58 23.96%
30~34歳 261 41 15.70%
35~39歳 234 26 11.11%
40~44歳 239 17 7.11%
45~49歳 245 18 7.34%
50~54歳 230 6 2.60%
55~59歳 211 3 1.42%
60~64歳 146 1 0.68%
65~69歳 91 1 1.09%
70~74歳 29 0 0%
75~79歳 12 0 0%
80歳以上 1 0 0%

 短答では強かった高齢受験者が壊滅し、若手が圧倒的有利になっています。20代前半にとっては、「10人受ければ3~4人は受かる」試験です。それが、40代以降になると、「100人受けてようやく何人か受かる。」という感じになっている。以前の記事(「令和6年司法試験の結果について(13)~若手優遇策の歴史~」)で説明した若手優遇策は、予備試験の論文式試験でも用いられ、絶大な効果を発揮しているのです。法律の知識・理解だけで勝負させてしまうと、短答のように高齢受験者が有利になり、50代後半が最も受かりやすい試験になってしまう。「50代まで勉強を続けた者が一番受かりやすい試験」など、誰も受けたくないでしょう。だから、そのような年代層が受からないような出題、採点をする。具体的には、長文の事例問題を出題し、規範と事実、当てはめ重視の採点をするということです。規範も、判例の規範であれば無条件に高い点を付けるが、学説だとかなり説得的な理由を付していなければ点を付けない。若手は、とにかく判例の規範を覚えるので精一杯です。しかし、勉強が進んでくると、判例の立場の理論的な問題点を指摘する学者の見解まで理解してしまいます。「そうか判例は間違いだったのか。」と、悪い意味で目から鱗が落ちる。こうして、年配者は、「間違った」判例ではなく、「正しい」学説を書こうとします。この傾向を逆手に取れば、若手優遇効果のある採点ができるというわけです。この採点方法は、「理論と実務の架橋という理念からすれば、まず判例の立場を答案に示すことが求められる。」という建前論によって、正当化することができる点でも、優れています。このことを知った上で、正しく対策をしないと、知識・理解をどんなに深めても、合格することは極めて困難になります。一方で、正しく対策し、訓練すれば、高齢受験者でも、不利を克服できることがわかっています(「令和6年司法試験の結果について(8)~予備組の結果~」)。上記2のとおり、漫然と受験を繰り返すだけでは、計算上、40代以上の受験者は合格に100年以上かかっても不思議ではない。合格に必要とされる知識・理解の程度は、19歳以下でも習得できるレベルになっているのが現状です。その程度の知識・理解を習得した後に合否を分けるのは、配点の高い規範と事実を重視した答案スタイルと、それを最後まで書き切る筆力です。意識して答案スタイルを変え、限られた時間で必要な文字数を書き切るだけの訓練をすることが必要です。「こんなことは法曹に必要な能力なのか。」とか、「こんな非本質的な作業はつまらない。」等と思っているうちは、合格は極めて難しいでしょう。

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