令和6年予備試験民事実務基礎の参考判例等

(最判昭35・3・1より引用。太字強調は当サイトによる。)

 被上告人が本件土地を所有しかつその登記を経由していること、右土地上に訴外Dの所有する建物が存在し、上告人がこれに居住してその敷地を占有していることは、いずれも原判決の確定するところであり、上告人は、右Dが被上告人から本件土地を使用貸借により借り受けてその地上に前記建物を建築し、上告人がこれを賃借したと主張し、被上告人はこれを争つているのである。この場合、上告人の前記正権原の主張については、上告人に立証責任の存することは明らかであり、上告人は占有者の権利推定を定めた民法188条の規定を援用して自己の正権原を被上告人に対抗することはできないと解するのが相当である。

(引用終わり)

(参照条文)民法612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

(最判昭26・5・31より引用。太字強調は当サイトによる。)

 原審の確定した事実によれば、「本件係争家屋は、もと訴外仏国人Dがその所有者訴外Fから賃借していたものであり、昭和21年秋Dの帰国に際し、上告人において同人からその賃借権の譲渡を受けたのであるが、この賃借権の譲渡については賃貸人であるFの承諾を得ていなかったのである。FはDの帰国後上告人が本件家屋に居住しているのをDの女中であつた訴外GからDの留守居であると告げられ、それを信じてDの支払うものとして2、3回Gを通じて賃料を受領したことがあつたが、その後上告人がDの留守居ではなく同人から賃借権を譲受けて右家屋に居住するものであることを覚知するに及んで上告人との間に紛争を起し、その解決をみないうちに本件家屋を被上告人に売渡すに至つたものであり、しかもFは右家屋売却前の賃料相当額の損害金は上告人より取立て得るものと考え、上告人と交渉の結果昭和22年10月30日に至り同年1月分から10月分までの損害金として金1100円を受領したものである」というのである。そしてこの原判決の事実認定はその挙示する証憑に照らし、これを肯認するに難くないのであつて、前記Fが昭和22年1月分から10月分までの賃料を受領したものの如くに見ゆる乙第二号証の記載のみを以てしては、いまだ右認定を妨ぐるに足りない。上告人は本件家屋につき前所有者であるFに対し賃料を遅滞なく支払つていることは当事者間に争なきところであると主張するけれども、その然らざることは記録上明白である。原審は右認定にかかる事実と、本訴当事者間に争がない「被上告人が昭和22年10月10日訴外Fから本件家屋を買受けその所有権を収得した」との事実及び「上告人が被上告人の右所有権取得前から該家屋を占有している」との事実にもとずき上告人は昭和22年10月10日以前から前所有者F及び被上告人のいずれにも対抗し得べき何等の権原もなく不法に本件家屋を占有するものであると判示したのである。この判旨の正当であることは民法612条1項に「賃借人ハ賃貸人ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ譲渡……スルコトヲ得ス」と規定されていることに徴して明白であり、所論同条2項の法意は賃借人が賃貸人の承諾なくして賃借権を譲渡し又は賃借物を転貸し、よつて第三者をして賃借物の使用又は収益を為さしめた場合には賃貸人は賃借人に対して基本である賃貸借契約までも解除することを得るものとしたに過ぎないのであつて、所論のように賃貸人が同条項により賃貸借契約を解除するまでは賃貸人の承諾を得ずしてなされた賃借権の譲渡叉は転貸を有効とする旨を規定したものでないことは多言を要しないところである。

(引用終わり)

(最判昭44・2・18より引用。太字強調及び※注は当サイトによる。)

 物の賃貸人の承諾をえないで賃借権の譲渡または貸借物の転貸借が行なわれた場合には、右賃貸人は、民法612条2項によつて当該賃貸借契約を解除しなくても、原則として、右譲受人または転借人に対し、直接当該賃貸物について返還請求または明渡請求をすることができるものと解すべきである(最高裁判所昭和25年(オ)第87号同26年4月27日第二小法廷判決、民集5巻325頁および最高裁判所昭和25年(オ)第125号同26年5月31日第一小法廷判決、民集5巻359頁(※注:前掲最判昭26・5・31を指す。)参照)。もつとも、右の場合においても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときには、賃貸人は、民法612条2項によつて当該賃貸借契約を解除することができず、右のような特段の事情があるときにかぎつて、右譲受人または転借人は、賃貸人の承諾をえなくても、右譲受または転借をもつて、賃貸人に対抗することができるものと解すべきである(最高裁判所昭和32年(オ)第1087号同36年4月28日第二小法廷判決、民集15巻1211頁および最高裁判所昭和39年(オ)第25号同年6月30日第三小法廷判決、民集18巻991頁参照)。そして、右のような特段の事情は、右譲受人または転借人において主張・立証責任を負うものと解すべきである。

(引用終わり)

(最判昭30・7・15より引用。太字強調は当サイトによる。)

 弁済の抗弁については、弁済の事実を主張する者に立証の責任があり、その責任は、一定の給付がなされたこと及びその給付が当該債務の履行としてなされたことを立証して初めてつくされたものというべきであるから、裁判所は、一定の給付のなされた事実が認められても、それが当該債務の履行としてなされた事実の証明されない限り、弁済の点につき立証がないとして右抗弁を排斥することができる

(引用終わり)

(参照条文)民法696条(和解の効力)

 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。

(東京地判平3・11・14より引用。太字強調は当サイトによる。)

 絵画の売買の仲介等を業とする被告は、平成元年2月初旬頃、本件絵画の所有者である訴外Z1の知り合いで絵画の売買等を業とする訴外Z2から本件絵画の買主を見付けてこれを売却することの依頼を受け、同月27日頃、画廊を経営する訴外Z3の紹介を受けた原告に対して、本件絵画を2億数千万円で売却してほしいとしてこの話を持ち込んだこと、これに対して、原告は、早期に買主を見つけることができる見通しがあるとして、同年3月7日頃、訴外Z1にあてて本件絵画の「買付依頼書」を作成して交付したこと、ところが、訴外Z1は、同月下旬頃、本件絵画をヨーロッパで売却することにしたなどとして、訴外Z2及び被告に対して先にした売却の依頼を撤回し、また、原告も、直ちには買主を見付けることができないとしたため、訴外Z2、被告、訴外Z3及び原告の間においては、それ以上の進展をみないままとなっていたこと、しかし、原告は、実際には、この間の同月30日、被告らには告げることなく、訴外会社との間において本件絵画を代金2億8000万円で売り渡す旨の契約を締結し、また、同年4月19日、訴外Z1から本件絵画を代金2億6000万円で買い受ける旨の契約を締結していたこと、被告は、同年6月3日、右のような事情を知らずに、たまたま原告から本件手形の割引依頼を受けたが、その際、初めて右の事実を知るに及んで、原告と訴外Z1が謀ったうえで、被告らを除外して本件絵画についての前記の取引を行って、それぞれが利を図ったものであると判断し、既に被告が訴外Z1との間において代金2億3000万円で売買契約を締結していたものであるなどと主張して、原告に対して転売利益の分配又は訴外Z2及び同Z3に支払うべき仲介料等の支払いを求めるようになったこと、このような状況の下において、被告と原告(その従業員訴外鈴木)は、同月7日、被告が本件手形の割引金のうち5500万円を原告に支払い、残余は被告、訴外Z2又は同Z3において取得するものとすることで一切の債権債務を清算することとして、「本件絵画の売買については、当初に戻り全て終結し、双方異議の申し立ては一切ありません。」との記載のある「和解書」と題する書面に調印したことの各事実を認めることができる。
 右事実によれば、原告と被告は、本件絵画の取引及び本件手形の割引をめぐる紛議については右の合意をもって一切を解決して、その争いを止めることを約することによって和解契約を締結したものということができる。したがって、原、被告間の本件手形の割引依頼をめぐる債権債務は、前記の5500万円の授受をもって一切が消滅したものというべきであるから、仮に原告が不法行為又は不当利得その他の原因によって被告に対してなんらかの債権を取得することがあったとしても、いずれも右和解契約によって消滅したものであって、被告の抗弁は理由がある。

(引用終わり)

(最判昭45・11・26より引用。太字強調は当サイトによる。)

 成立に争いのない甲第一号証(乙第一号証も同様)は、被上告人と、上告人ら間の本件土地についての売買契約公正証書であつて、その契約条項中には、被上告人は上告人らに対し本件土地を代金21万6300円で売り渡し、上告人らはこれを買い受ける旨、および右売買不動産は現在農地につき直ちに名義変更が出来ない状態にあるので登記可能状態になり次第買主に対し所有権移転登記をしなければならない旨記載され、成立に争いのない乙第二号証は、被上告人のD宛の領収書であつて、これには、本件土地代金21万6300円全額受領した旨記載されており、右各証の記載および体裁からすれば、別異に解すべき特段の事情が認められないかぎり、昭和32年11月19日被上告人と上告人ら間に本件土地につき売買契約ないしは売買の予約が成立したものと認めるのが自然である。

(引用終わり)

(参照条文)民訴法
228条(文書の成立)
 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2、3 (略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 (略)

229条(筆跡等の対照による証明)
 文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる。
2~6 (略)

(東京地判平3・6・27より引用。太字強調は当サイトによる。)

 人の筆跡には、それなりに固定化した特徴、すなわち筆跡個性がある。筆跡鑑定は、この筆跡の個人差に着目して、複数の文書の筆跡個性を比較対照することによって、筆者の同一性を識別しようとするものである。ただ筆跡は、指紋のように万人不同で常時不変でもないので、その鑑定は、指紋を照合してその同一性が即人物の同一性と判定し得るごとくに単純明快ではなく、筆跡の同一性は程度の問題となり、それに基づく筆者の同一性は確率の問題となる。まず、鑑定資料からその筆跡個性をいかに抽出するかという問題がある。また、この筆跡個性を比較する際に、これを構成する個々の特徴の異同をいかに判別するかという問題がある。さらに、この筆跡個性の間に全体としてどの程度の異同があれば、最終的に同筆あるいは異筆と結論するのかという、鑑定基準の問題がある。筆跡鑑定の信頼性はこれらの各プロセスにおける判断の科学性、客観性及び厳格性にかかっているといえよう。
 筆跡鑑定に科学性、客観性及び厳格性を持たせてその信頼性を担保するためには、次の観点が重要であると思われる。まず、鑑定資料からの筆跡個性の特定において、個々の特徴の稀少性(固定化された筆跡個性が他人のものと大きくかけ離れていること)及び恒常性(常同性)(固定化した筆跡個性が一人の人の間で繰り返し現れること)を検討すべきことは個性を抽出せんとする限り当然の要請であるが、問題は、稀少性及び恒常性の認定の基準をどこに置くかということである。また、筆跡個性を比較する場合、それが全体的な比較であるから、相同性のみならず相異性をも検討すべきことは当然であるが、問題は、個々の特徴の異同を判定する際に、それが指紋の場合のように完全に重なり合うことはまずあり得ないから、そのずれの程度の客観的把握と、どの程度のずれまでを同じ特徴として判別するかの基準をどこに置くかということである。すなわち、同一人が書いた同一文字であっても、すべての特徴が同じということはないし、また、別人が書いた筆跡であっても、全く異なるということもないのであるから、筆跡鑑定をする際には、個人内変動の幅を見きわめておかなければならない。さらに、いわゆる鑑定基準の設定については、同筆及び異筆のできるだけ多くの例について、右の観点から筆跡個性の比較・検討を重ねることにより、より正確に一般化することが要請されるであろう。
 前叙のとおり、筆跡は、指紋等と異なり、日本国内に同一の筆跡個性を有する者が二人といないということが証明されているわけではないから、鑑定資料の筆跡に現れた個性と対照資料に現れた個性とが同一と判断された場合にそれだけで直ちに両文書の筆者が同一人と断定することはできない。また、筆跡の個性を把握することは指紋や血液型等の特徴を把握することに比較すればはるかに困難であり、鑑定人の主観的な判断が入り込みやすく、それだけに、筆跡鑑定の証拠価値については十分に慎重な態度が要求されるものといえる。

(引用終わり)

(参照条文)
◯民事執行法
22条(債務名義)
 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。
 一 確定判決
 二~七 (略)

23条(強制執行をすることができる者の範囲)
 執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。
 一 債務名義に表示された当事者
 二 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人
 三 前2号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第1号……(略)……に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、……(略)……)
2、3 (略)

◯民事保全法
13条(申立て及び疎明)
  保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。
2 保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。

24条(仮処分の方法)
 裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を……(略)……禁止し、……(略)……その他の必要な処分をすることができる。

47条3項
 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。

55条(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)
 建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
2 第47条……(略)……第3項……(略)……の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

64条(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力)
 第55条第1項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。

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