1.令和6年予備試験民訴法。設問2は、参加的効力の範囲に関する判例・裁判例の規範を明示できるかで、差が付くでしょう。
2.まず、明らかに合否を分けると思われるのが、最判平14・1・22の規範です。
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(最判平14・1・22より引用。太字強調及び※注は筆者。)
旧民訴法78条,70条(※注:現行の53条4項、46条に相当する。)の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条(※注:現行の42条に相当する。)にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られるところ,ここにいう法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される(最高裁平成12年(許)第17号同13年1月30日第一小法廷決定・民集55巻1号30頁参照)。 (引用終わり) |
合格レベルの受験生であれば当たり前のように覚えている知識なので、これすら挙げられないようだと、合格答案にはなりにくいでしょう。
3.それから、全体の出来次第ではあるものの、合否に影響するかもしれないのが、参加人・被参加人間の実体関係に関する規範です。これに関しては、「そんなの要らねーよ。」という高裁判例が一応あります。
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(仙台高判昭55・1・28より引用。太字強調及び※注は筆者。)
原判決は、次のとおり説く。 (引用終わり) |
この高裁判例は、告知者・被告知者間の実体関係の要否という論点が議論されるきっかけを作ったという意味では重要で、よく参照されるのですが、被告知者が告知者ではなく反対当事者に補助参加したことを軽視している点(※1)、参加の利益を告知者の主観で決するとする点なども含め、判示内容はとても評判が悪い(※2)。現在では学説のほぼ全てが、告知者・被告知者間に何らか実体関係を要求します(※3)。なので、この高裁判例に依拠するのは避けるべきでしょう。
※1 原告と被告の立ち位置が入れ替わっているなど、本問とは事案が異なるものの、敢えて本問の登場人物になぞらえていえば、Yから訴訟告知を受けたAがXに補助参加したが、表見代理の成立が認められてYが敗訴したため、YがAに損害請求をした、という状況に概ね相当します。
※2 伊藤眞『民事訴訟法〔第7版〕』(有斐閣 2020年)701頁注89、高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下)〔第2版補訂版〕』(有斐閣 2014年)485、486頁、瀬木比呂志『民事訴訟法[第2版]』(日本評論社 2022年)624頁、小林秀之『新ケースでわかる民事訴訟法』(日本評論社 2021年)378頁等参照。
※3 三木浩一ほか『民事訴訟法〔第4版〕(LEGAL
QUEST)』(有斐閣 2023年)580頁は、補助参加の利益で足りるという立場を「伝統的な通説」としていますが、現在、自説としてこれを積極に主張する論者は(後記4のように補助参加の利益に実体関係を取り込む立場を除き)ほとんど見当たりません。
4.問題は、どのような実体関係が必要なのか、その判断基準です。
概説書等では、「告知者敗訴により告知者・被告知者間に直接に求償又は賠償関係が成立する実体関係」を要するとする見解を紹介するものがあります。もっとも、この見解については、2つの点で注意が必要です。
まず、この見解を採る論者の一定数は、これを補助参加の利益として要求しており、訴訟告知の文脈では、これを欠く場合には補助参加の利益を欠くがゆえに、参加的効力が生じないと考えているとみられることです(※4)。これは、補助参加の利益の限定的な理解と連動して、訴訟告知による参加的効力も限定的となるという理解であって、これ自体は論理的ですが、多くの受験生は、補助参加の利益をここまで限定的に捉えないので、補助参加の利益を広く捉えながら、訴訟告知の効果としての参加的効力についてここまで限定的に理解するというのであれば、相応の説得的な理由が必要でしょう。
※4 伊藤眞『民事訴訟法〔第7版〕』(有斐閣 2020年)687、701頁、高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下)〔第2版補訂版〕』(有斐閣 2014年)439、478頁参照。前掲最判平14・1・22も、その趣旨のものと読む余地があります(安永祐司「判批」民事訴訟法判例百選〔第6版〕206頁)。
また、本問では、Aが補助参加の利益を有することが前提とされています。
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(問題文より引用。太字強調は筆者。) Xは、上記のようなAの主張は訴訟告知の効果によって排斥されるべきであると考えている。Xの立場から、Aの主張を排斥する立論を、判例を踏まえて、展開しなさい。なお、解答に当たっては、Aが補助参加の利益を有していたことを前提として論じなさい。 (引用終わり) |
仮に、補助参加の利益として「告知者・被告知者間に直接に求償又は賠償関係が成立する実体関係」を要するとする見解を採るとすれば、上記の前提によって具体的な当てはめを要することなく結論が出てしまう。考査委員は、この見解からの解答は考慮していなかったといえるでしょう。
もう1つ、本問で、「告知者敗訴により告知者・被告知者間に直接に求償又は賠償関係が成立する実体関係」があるか否かです。直感的には、「X敗訴によって、AはXに対して無権代理人の責任を負うので、『直接に求償又は賠償関係が成立する実体関係』があるでしょ。」と思いたくなるところ。そのように考えているとみられる文献もあります(※5)。しかし、この場合を「法律上の択一的関係にある場合」として区別し、告知者は同時審判申出訴訟によって両負けを防止できるから、参加的効力が生じないとする見解もあります(※6)。仮に、訴訟告知の制度趣旨を告知者の両負け防止と捉えた上で、上記実体関係を要するとする見解を採用する場合には、同時審判申出訴訟によって両負けを防止できる点を考慮する必要があるでしょう。
※5 長谷部由起子『民事訴訟法 第4版』(岩波書店 2024年)373頁。
※6 瀬木比呂志『民事訴訟法[第2版]』(日本評論社 2022年)621頁。
5.論文対策として考える場合、「告知者敗訴により告知者・被告知者間に直接に求償又は賠償関係が成立する実体関係」で判断する立場は、硬直的・限定的で使い勝手が悪いことに加え、文字数が多くて答案に書く時間を無駄に要するという欠点があります。なので、規範として準備するなら、東京地判平元・7・17の示した「訴訟追行を協同する実体関係」の方が優ると思います。
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(東京地判平元・7・17より引用。太字強調及び※注は筆者。)
Xと本件建物の所有者Zとの間にZが原告となり、Xを被告として建物の滅失によるX占有部分の明渡等を求める訴(東京地方裁判所昭和61年(ワ)第11247号)が提起され、Xは反訴としてZの賃貸人としての債務不履行、土地工作物責任による損害賠償請求を起こしたところ、Zが本件電灯線が土地工作物にあたることを争うとともに、本件出火は専らYの本件電灯線の管理不注意にあると主張して争ったので、第7回の口頭弁論期日が終わった段階でXからYに対し、右反訴において占有者であるYが責任を負うからZに責任がないとしてXが敗訴した場合、Yに対しその責任を追求すべき関係にあるとして訴訟告知がなされ、その後、ZとX間の訴訟は昭和63年6月27日に判決が言い渡され、そのころ確定し、その判決において本訴はZが勝訴し、反訴もZには債務不履行の帰責性がなく、また、本件電灯線は土地工作物にあたらないとしてZが勝訴した……(略)……。 (引用終わり) |
当サイトの参考答案は、この見解に依っています。
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(参考答案(その1)より引用。太字強調は筆者。) 参加的効力は、主文に加え、主文を導き出すために必要な理由中の判断にも及ぶ(判例)。もっとも、訴訟追行を協同する実体関係にない事項については、この限りでない(裁判例)。 (引用終わり) |
理由を付すなら、参考答案(その2)のような感じです。
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(参考答案(その2)より引用。太字強調は筆者。)
2.53条4項、46条の趣旨は公平のため敗訴責任を分担する点にあるから、同条の「効力」は既判力と異なる参加的効力であり、告知者敗訴の場合にのみ生じる。 3.53条4項が「参加することができた時に」とする趣旨は、補助参加しようと思えばできたことを参加的効力を及ぼす正当化根拠とする点にあるから、補助参加の利益(42条)を要するところ、Aは補助参加の利益を有していた。 4.前記2の趣旨から、参加的効力は主文に加え、主文を導き出すために必要な理由中の判断にも及ぶ(判例)。もっとも、前記3の正当化根拠は、補助参加による訴訟追行の協同を前提とし、利害対立により告知者・被告知者の主張・立証が矛盾抵触するような場合には妥当しない(46条2号参照)。したがって、訴訟追行を協同する実体関係にない事項については、参加的効力は及ばない(裁判例)。 (引用終わり) |
6.告知者・被告知者間の実体関係については、論述を落としてしまった人が多かったことでしょう。しかし、事前に規範に組み込んで準備していれば、後は当てはめるだけなので、論述を落とすことはない。訴訟告知をわざわざ出題する場合には、通常はこの実体関係まで問われるのが通常なので、規範に組み込んで覚えておくべきなのです。論証等を作成するに当たっては、「この論点がわざわざ出題されるときは、どんな出題がされるだろうか。」ということを想像しつつ、どこまで規範に組み込んでおくべきかを判断する必要がある。予備校等の論証は、その点において不十分なものが結構あるな、というのが、当サイトの印象です。